日本ゼオンは「第14回 高機能プラスチック展 PLASTIC JAPAN」に出展し、開発品として「透明電磁波遮蔽材料」と高透明低誘電接着フィルム「LS」を紹介した。
日本ゼオンは「第16回 高機能素材 Week −Highly-Functional Material Week−」(会期:2025年11月12〜14日、幕張メッセ)内の「第14回 高機能プラスチック展 PLASTIC JAPAN」に出展し、開発品として「透明電磁波遮蔽材料」と高透明低誘電接着フィルム「LS」を紹介した。
同社の透明電磁波遮蔽材料は、電磁波を吸収する特殊なアクリル系の微粘着ポリマーで、主に10GHz以上のミリ波帯(高周波帯)で良好な遮蔽(しゃへい)能力を発揮する。透明であるため、見通しも確保できる他、柔軟な材料のため曲面などの設置にも応じる。
日本ゼオンの説明員は「透明電磁波遮蔽材料は10〜110GHzのミリ波帯で電磁波を遮蔽する。同材料は完成目前で、ニーズがあれば量産可能だ。用途としては、ローカル5Gでの電波干渉抑制や車載ミリ波レーダーの遮蔽、5G基地局の電波対策を想定している。特にローカル5Gを使用する工場内などで、電磁波を遮蔽する仕切りに使えるとみている。透明性があるため安全性や作業性も確保できる。加えて、工場内のFA機器など、電磁波を出す機器での電波干渉抑制にも役立つ」と話す。
LSは、同社が量産しているシクロレフィンポリマーを原料とした高透明接着フィルムだ。同フィルムの低誘電正接(Df)は0.0006で、低誘電率(Dk)は2.2%と低いため、伝送損失を減らせる。低吸水性は0.01%で、加水分解せず、電子デバイスなどの保護に適している。全光線透過率が高いため黄変しにくく、白濁しないといった耐候性も備えている。銅、ガラス、ポリカーボネート、ポリプロピレン(PP)などに表面処理せずに、接着できる。加熱により解体が可能で、リサイクルしやすい。
LSの用途としては、透明光学デバイスの封止材や高周波(5G/6G)向け透明アンテナ、フロントガラスの中間膜を想定している。
透明光学デバイスの封止材に関して、LSは高い光学特性と低吸水性を有しているため、ガラスにデバイスを埋め込む際に使用する封止材として使える。「低アウトガス性も備えているためデバイスの腐食防止に貢献するだけでなく、優れた電気特性により高品質なデバイスの実現にも役立つ」(日本ゼオンの説明員)。
高周波向け透明アンテナでは、LSの優れた電気特性と銅への高接着力により基板の伝送損失低減にも寄与する。
フロントガラスの中間膜について、LSは長距離LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)で利用する1550nmのレーザー光の透過性に優れる。
日本ゼオンの説明員は「透明光学デバイスで合わせガラスの中間膜として使用する場合、LSはポリビニールブチラー(PVB)と比較して銅の配線と接触させても黄変せず、銅配線の抵抗値上昇も防げる。透明アンテナなどで使われる金属メッシュとの組み合わせでも同様の問題を解決できる。自動車のフロントガラスに使用した場合、LiDARのセンサーの性能維持に役立つ」と述べた。
なお、LSの開発は完了しており、顧客に採用されれば量産に移れる段階だという。
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