トヨタ自動車は、「ケミカルマテリアルJapan2025」で、マテリアルズインフォマティクス(MI)の導入を支援するクラウドサービス「WAVEBASE」や、2026年に実装を予定している同サービスの新機能を紹介した。
トヨタ自動車は、「ケミカルマテリアルJapan2025(Chemical Material Japan2025)」(会期:2025年11月27〜28日、東京ビッグサイト)内の「第4回 プロセス産業DX展」に出展し、マテリアルズインフォマティクス(MI)の導入を支援するクラウドサービス「WAVEBASE」や、2026年に実装を予定している同サービスの新機能を紹介した。
WAVEBASEは、対象材料のスペクトルデータや画像データ、プロファイルなどの分析データを自動で数値化できる他、有用な説明変数(材料の構造情報を表す変数、あるいは性能に影響を与えている因子を示す変数など)の選択や予測モデルの妥当性確認などもサポートする。得られた結果の解釈をサポートする機能も備えている。同機能により、対象のデータから抽出した特徴量を強調して可視化できる。
トヨタ自動車の説明員は「WAVEBASEは、データサイエンス初学者の方でも簡単に操作できるだけでなく、少数のサンプルからでも統計的に意味のあるモデルを構築可能だ。意思決定に計測データを最大限使えるツールとなっている」と利点に触れた。
WAVEBASEの利用手順は以下の通りだ。まず、ユーザーが対象材料の実験で得られたデータをWAVEBASEシステムにアップロードする。次に同システムがそれらのデータの前処理を行った後、特徴量を取り出す。続いて、ユーザーは、抽出した特徴量を任意に説明変数もしくは目的変数に用いることができる点を生かして、統計モデルを構築する。このモデルにより変数間の相関を解析することが可能である。その後、これらの結果をベースに、同システムが複数の目的変数に応じてベイズ最適化を行うことで、次の実験点を提案する。なお、各工程で得られたデータは同システムに蓄積および共有される。
2026年に実装を予定している同サービスの新機能は、「解析フローの管理」「開発現場の気付き/ノウハウの文書化」「画像セグメンテーション機能(改良)」となる。
「解析フローの管理」は、データセットに新たなデータを追加し、既存データと同じ解析フローを適用できる。データフローの各ステップにレポートも添付可能だ。このレポートは解析における気付きを記録したもので、学びを今後の解析に生かせる。さらに、複数の解析フローを作成し、解析結果を目的別に分類できる。これにより、複数の組織でデータを共有しながら、各組織で異なる解析を行える。
トヨタ自動車の説明員は「複数のステップを伴う解析だと、解析の流れが複雑化し、別のデータで同じ解析を再現することが困難である。また、解析方法を確立するまでの試行錯誤の履歴が残っておらず、その中で得られた学びが今後の解析に活用できないケースもある。これらの問題を解消するのに、新機能は役立つ」と説明した。
「開発現場の気付き/ノウハウの文書化」は、実験時の写真や手書きメモ、実験の条件データが記載されたExcelなどを、ユーザーがWAVEBASEの専用システムにアップロードできる機能だ。重要な情報にタグ付けしてデータ同士を関連付けるだけで、レポートを自動生成できる。なお、手書きメモは高精度な光学文字認識(OCR)で読み取り、レポートに反映される。実験条件が記載されたCSVデータの読み込みにも応じる。これらのレポートはWAVEBASE上のAI(人工知能)検索で瞬時に見つけられるという。将来は、音声や動画といったデータのレポート化も対応する予定だ。
トヨタ自動車の説明員は「現場の知見は手書きメモや写真など文書以外で記録されることが多く、活用ができていない。新機能はこの問題を解決する」と話す。
「画像セグメンテーション機能」は、対象の画像データから見本に近い物体のみを検出する機能だ。同機能は、重なったオブジェクトに対してセグメンテーションが行える。数個の見本を入力することで、高精度なセグメンテーショも実現する。見本を共通化させて、複数の画像データを一括でセグメンテーションすることにも応じる。見本と異なる形状や色の物体の検出も抑えられる。
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