本連載ではマテリアルズインフォマティクスに関する最新の取り組みを取り上げる。第6回は、MIやロボティクス技術などを応用したサービスとソフトウェアの研究、開発、提供を行うMI-6の取り組みを紹介する。
国内のメーカーでは、製品のニーズの多様化や開発期間短縮の影響で、開発期間短縮の影響で、扱う素材の高品質化と開発スピードの向上が求められている他、海外拠点でも国内製品と同様の品質を実現することが必要となっている。しかし、研究者や技術者のノウハウに依存したこれまでの手法では対応が難しい状況だ。
解決策の1つとして、材料開発の速度と精度を向上させるために、マテリアルズインフォマティクス(MI)やプロセスインフォマティクス(PI)を活用する企業が増えつつある。そこで本連載では、国内製造業におけるMIやPIの最新の取り組みを紹介する。
第6回で取り上げるのは、MIやロボティクス技術などを応用したサービスとソフトウェアの研究、開発、提供を行うMI-6だ。同社 取締役 Co-founderの入江満氏に、創業の経緯や会社概要、現在展開しているMIのサービス、導入の効果、今後の展開などについて聞いた。
MONOist MI-6の創業経緯や会社概要について教えてください。
入江満氏(以下、入江氏) 私はMI-6で働く前にITモビリティを扱う外資系スタートアップに勤めていたが、日本法人解散に伴い退職した。その後、私が大学生の時に、バイオインフォマティクス、統計解析、これらに関するソフトウェアの開発を経験していたこともあり、以前から交友関係があった木嵜基博氏に誘われ、共同でMI-6を2017年11月に創業した。木嵜氏はMI-6の代表取締役(CEO)を務めている。MI-6の創業に当たっては、東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授でMIに精通している津田宏治氏に技術顧問に就任してもらった。
当社は2018年に営業を開始した。2018〜2025年の期間で150社以上にMIを導入してきた。創業当初はMIのコンサルティングが主体だったが、今ではMIで役立つソフトウェアやサービスなどを提供するソリューションプロバイダーとなっている。
MONOist MIの事業化をどのように行いましたか。
入江氏 まずはコンサルティングとして、顧客の素材開発やモノづくりの課題を知り、これらの課題をデータサイエンスで解消する事業を展開した。コンサルティング事業では、私が大学生時代に、統計解析や機械学習、それらのソフトウェア開発を行っていた経験を生かすとともに、津田氏を中心とした津田研究室の技術を取り入れながら、素材開発などのコンサルティングで得られたデータを解析してレポートとして納品していた。こういった実績を重ねながら、素材開発やモノづくりへの理解を深めつつ、データサイエンスの活用方法を模索した。そして、コンサルティング事業で得られたノウハウをベースにMIのソフトウェアを開発し、当社のサービスとして提供を始めた。
MONOist 最初の顧客について教えてください。
入江氏 最初の顧客は試薬メーカーのキシダ化学だ。キシダ化学ではリチウムイオン電池用難燃性電解液の試薬開発を行っていた。そこで、当社の機械学習モデルで行える「物性の予測」や「レシピ(材料表)の提案」、これらの可視化に関心を持った。そして、MI-6や東京大学の津田研究室、三井物産などが協力し、リチウムイオン電池用難燃性電解液の試薬開発でMIを導入した。
その結果、キシダ化学では当社の機械学習モデルによりチャンピオンデータ(非常に良いデータ)を超えるレシピをすぐ生成できた。ただ、MIの価値は機械学習モデルなどのAIで生成されたデータから、開発者が気付きを得て、優れた素材の開発につなげることだと考えている。そのため、当社ではそういった点の重要性も素材/化学業界などで浸透させている。
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