MI-6のソリューション 素材開発工数「4分の1」と期間を「10年から半年」にマテリアルズインフォマティクス最前線(6)(2/3 ページ)

» 2025年07月14日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

展開しているMIのサービスとは?

MONOist 現在展開しているMIのサービスについて教えてください。

入江氏 当社のMIサービスは、コンサルティング型サービス「Hands-on(ハンズオン) MI」、MIソリューションを提供するサービス「miHub(エムアイハブ)」の2つだ。研究開発の自動化を支援するサービスとして「 Lab Automation(ラボオートメーション)」の構築も進めている。

MI-6が提供しているMIのサービス MI-6が提供しているMIのサービス[クリックで拡大] 出所:MI-6

入江氏 これらの中で最初に立ち上げ、2018年に提供を開始したHands-on MIは、コンサルティングとMIにより「新規材料探索」「材料の仮想スクリーニング」「組成/プロセスの条件最適化」「要因分析」をサポートする。

 「新規材料探索」では、これまでの知見や経験、勘では実現できない目標物性を持つ新規材料の開発というニーズに対応し、「材料の仮想スクリーニング」では、過去のデータやデータベースを基に、目標の物性を持つ材料を発見したいという需要に応える。「組成/プロセスの条件最適化」では、材料の配合/プロセス条件を調整して、品質/収率の向上に貢献する。「要因分析」では、実験/製造データから、素材/製品の品質と収率に影響を与えている物性パラメーターの可視化を支援している。

「Hands-on MI」の概要 「Hands-on MI」の概要[クリックで拡大] 出所:MI-6

入江氏 このサービスでは総じて、開発を進めている素材などのデータを顧客から共有してもらい、開発テーマに適したMIを適用し、プロジェクトを推進する。加えて、MIを用いたコンサルティングだけでなく、開発テーマに適したアルゴリズムを備えたアプリケーションを納品したり、得られた成果をまとめたレポートやシステムを提供したりしている。

 2020年に提供を開始したmiHubは、MIにより素材などの実験計画を高度化させるシステムだ。miHubではベースの技術として機械学習の1つであるベイズ最適化を採用している。当社はベイズ最適化の基礎研究を行っており、ベイズ最適化を用いたMI技術を強みとして持つ。

 miHubは、顧客のデータを基にベイズ最適化を行い、次に実施する必要がある実験や、求められるレシピ、加工、配合の導出を支援し、開発者の意思決定をアシストする。さらに、化合物やレシピから物性や性能などを予測し、次の実験の意思決定を後押しする仮想スクリーニングの機能も備えている。

 当社は「データのマネジメント」と「開発テーマのマネジメント」という新機能を実装したmiHubのアップデート版「体験拡張版」2025年7月1日にリリースした。

 データのマネジメント機能は、開発チームにおけるデータ整理プロセスを効率化し、MI解析用データセットへのスムーズな変換を実現する。データの蓄積/登録から解析設定、実験点の選択、結果の考察に至るまで、実験計画における各ステップを、直感的にワークフロー形式で管理できるようにもなる。これにより、データ整理そのものが目的化することを防ぎ、開発者やチームが、解析や考察など開発のクリエイティブな部分に注力できる環境を整えられる。

 具体的には、実験表の一元管理が行える他、インプットされた実験表に基づきMI解析用のデータセットを半自動で生成する。これにより、実験表の作成からMIによる解析までの工程や時間を減らせる。

 開発テーマのマネジメント機能は、開発テーマと解析プロジェクトを統合的に管理し、検証項目とのひも付けを実現して、実験データや関連情報を開発テーマ全体で俯瞰的に把握できる。つまり、開発テーマにおける構造や物性の解析、レシピの導出、加工工程(プロセシング)の位置付けを可視化する。また、因子間の関係性を視覚的に示すことで、研究者が解析や検証すべき対象を直感的に見極めることが可能になる。

 これらにより、各作業の役割を開発者が理解しやすくなり、「この解析は何のためにやっているのか?」という事態を防げる。

 MI活用には「属人化から脱する」という意味合いがあると考えているが、利用者によっては属人化してしまうケースがある。そのため、データのマネジメント機能で実験表を一元管理し、共通の実験表に基づきMI用のデータセットを生成し、開発テーマのマネジメント機能で各開発者がさまざまな業務の位置付けを理解する必要がある。なお、miHubの表示言語は日本語のため日本人が使いやすい。将来は海外展開も視野に入れているため多言語対応も構想している。

従来の「miHub」(上)と体験拡張版(下) 従来の「miHub」(上)と体験拡張版(下)[クリックで拡大] 出所:MI-6

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