トヨタ自動車は、「nano tech 2025」において、マテリアルズインフォマティクスのプラットフォームである「WAVEBASE」を紹介した。2021年から社外に向けた事業展開を開始しており、既に数十社の利用実績があるという。
トヨタ自動車は、「nano tech 2025(第24回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議)」(2025年1月29〜31日、東京ビッグサイト)において、マテリアルズインフォマティクス(MI)のプラットフォームである「WAVEBASE」を紹介した。2021年から社外に向けた事業展開を開始しており、既に数十社の利用実績があるという。
WAVEBASEは、トヨタ自動車の研究開発部門で培った素材開発やデータサイエンスの知見を基に構築したMIプラットフォームで新規事業に位置付けられている。材料データの蓄積、前処理、特徴量抽出、統計処理、次の実験検討を一気通貫で実施できるクラウドシステムと、顧客のニーズに合わせてトヨタ自動車の材料開発とデータ活用のスペシャリストが伴走し新素材の創出を支援するコンサルティングサービスから構成されている。
WAVEBASEの最大の特徴は、材料データの解析を行うクラウドシステムにおける特徴量抽出のプロセスにある。一般的なMIプラットフォームの場合、研究者がExcelなどを使って整形したテーブルデータを入力することになるが、実験サンプルやパラメーターなどについて一定以上の数をそろえた上でテーブルデータを作成しなければならず、手間がかかることが課題だった。
WAVEBASEは、材料のSEM(走査電子顕微鏡)やTEM(透過電子顕微鏡)などの電子顕微鏡データ、X線回折(XRD)やIR(赤外)/UV(紫外)をはじめとするスペクトルデータの生データをそのまま入力するだけで簡単に特徴量を抽出できる。また、計測データ全体を使い切る形で特徴量を抽出するので、入力する生データのサンプル数が20程度と少数でも統計的に意味のあるモデルを構築できるという。
さらに、抽出した特徴量と生データの関係を可視化するなど、得られた結果の解釈をサポートする解釈機能も備えている。
展示では、電動車向けの高出力モーターに用いられるネオジム磁石の開発に適用した事例を紹介。磁石の材料性能と内部組織の関係性を数値化するとともに、最適な配合やプロセスパラメーターを導出することができたという。
なお、WAVEBASEは生データを入力して特徴量を抽出できることから、材料開発以外の分野にも適用が可能だ。例えば、運転時のドライバーの心拍数データ分析や、エンジンの燃料噴射の画像解析などに適用した事例があるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.