住友ゴム工業は、宮城県仙台市青葉区で整備が進められている次世代放射光施設「Nano Terasu(ナノテラス)」で見学会を開いた。会場を移して同施設を用いた研究活動も紹介された。
住友ゴム工業は2023年11月17日、宮城県仙台市青葉区で整備が進められている次世代放射光施設「Nano Terasu(ナノテラス)」で見学会を開いた。その後、会場を移して同施設を用いて行う研究活動も紹介した。
Nano Terasuの建屋は、S造(一部RC造)の地下1階/地上2階建てで、延べ床面積は2万5324.8m2となっており、2024年に正式稼働する。同施設では電子銃から発射された電子ビームを線型加速器でほぼ光の速度まで加速した後、蓄積リング(円型加速器)により進行方向を変えることで放射光を発生する。線型加速器は海外の放射光施設のものと比べ約3分の1の長さとなる110mだ。
周長349mの蓄積リングは16組の「ラティス」から成り、1組のラティスは電子を曲げる4台の偏向磁石、電子の広がりを絞る10台の4極磁石と6極磁石、アンジュレーターで構成され、周回する電子ビームの進路を磁石で蛇行させ、放射光を生じる。この磁石の配列方法はマルチベンドアクロマット構造と呼称。線型加速器と蓄積リングでは最大の性能を発揮するために、電磁石などの各構成機器の位置を誤差50μm以内で調整している。
Nano Terasuの開発に協力している東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター(SRIS) 教授の高橋幸生氏は「Nano Terasuで使える次世代放射光の特徴は電子ビームの位相空間における広がりを表すエミッタンスが1.1nmradと細い点だ。これにより、九州シンクロトロン光研究センター(佐賀県鳥栖市)などの国内放射光施設と比べ、軟X線や2K〜5keVのテンダーX線領域の光の明るさ(輝度)を100倍向上している」と話す。
この放射光を用いた解析用のビームラインは当面、政府と共用する3ラインと1口5000万円で民間企業が年間200時間使える「コアリション利用」7ラインから成る10ラインとなる。「Nano Terasuでは最大で28ラインの解析用ビームラインを設けられるが、まずは10ラインから始める」(高橋氏)。政府と共用の3ラインは「軟X線ナノ電子分光(BL06U)」「軟X線ナノ吸収分光(BL13U)」「軟X線超高分解能共鳴非弾性散乱(BL02U)」で構成される。
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