出光興産は、持続可能な航空燃料(SAF)をHEFA技術で生産する際の原料として期待される非可食の油糧作物ポンガミアの試験植林を、2025年1月中旬からオーストラリアのクイーンズランド州で開始する。
出光興産は2025年1月9日、持続可能な航空燃料(SAF)をHEFA技術で生産する際の原料として期待される非可食の油糧作物ポンガミアの試験植林を、同月中旬からオーストラリアのクイーンズランド州で開始すると発表した。
HEFA技術とは、植物油などを水素化処理して得られる水素化エステルや脂肪酸からSAFを製造する技術とプロセスを指す。SAFの国際規格「ASTM D7566 Annex2」としても認証されている。
今回の試験植林は、10年以上にわたるポンガミアの栽培知見と研究成果を有する米国のTerviva(テルビバ)と行う。なお、出光興産はTervivaへの出資も行った。オーストラリアでのポンガミアの試験植林は、日本企業として初の試みだという。
この試験植林を通じて、ポンガミアの長期安定的な栽培方法や、栽培からSAFを生産するまでのサプライチェーンの最適化などの検証を実施する。また、植林によるカーボンクレジットの創出、殻のブラックペレット化(バイオマス発電所向け)、搾りかすの家畜飼料としての利用など、SAFの原料以外での活用方法も検証する。
東南アジアやオセアニアに分布するマメ科植物のポンガミアは、油収量効率の良い油糧作物だ。ポンガミアは食用に適していないが、種子を圧搾して得られる油は、SAFの原料としての活用が期待されている。これまでポンガミアは商業栽培されたことがなく、長期安定的に高収量の油を得るためには、優良品種の厳選と生産技術に加え、その栽培ノウハウの蓄積が重要となる。
今回の試験植林は、非農業エリアにおける栽培を検証すべく、オーストラリアの石炭資源会社であるStanmore(スタンモア)の協力の下、同社が管理/運営する約50ヘクタール(東京ドーム約11個分)の石炭鉱山の周辺用地で行う。
出光興産は2030年までに年間50万kLのSAF供給体制を構築することを計画している。この供給体制の構築に向けて、徳山事業所(山口県周南市)ではHEFA技術により年間25万kLのSAF生産を2028年度に開始することを目指している。
しかし、SAFの需要拡大に伴い、SAFの原料は将来的な需給逼迫(ひっぱく)や価格変動が起こると予想されており、原料の確保が課題となっている。出光興産はポンガミアの自社栽培/油の活用が、長期にわたって安定的かつ経済的な原料確保策と考えており、商業規模への拡大に向け、試験植林を開始する。
ポンガミアは、インド、東南アジア、豪州北部などの熱帯、亜熱帯エリアに自生する植物で、国内では沖縄県南部の一部にも自生している。この植物は強い日差しや干ばつに強く、海岸近くの塩分が比較的高い土壌でも栽培が可能だ。植物の生育に重要な窒素を栄養として蓄えることが可能ため、肥料が少なくても栽培できる。蓄えた栄養により土壌改良の効果もある。
加えて、食料用途と競合しない非可食の油糧作物で、単位面積当たりの油収量が他の油糧作物と比較して多いため、エネルギー供給量が多量で、エネルギー供給量単位当たりのCO2排出量(CI値)は大豆の半分以下だ。
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