MIを活用し高性能かつ量産可能な新規無鉛圧電材料を半年で開発マテリアルズインフォマティクス

日本特殊陶業は、同社で初めてマテリアルズインフォマティクス(MI)の手法を活用し、新たな材料開発フレームワークで高性能かつ量産可能な新規無鉛圧電材料を開発した。

» 2024年06月14日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 日本特殊陶業は2024年6月13日、同社で初めてマテリアルズインフォマティクス(MI)の手法を活用し、新たな材料開発フレームワークで高性能かつ量産可能な新規無鉛圧電材料を開発したと発表した。

126万通りの組み合わせパターンを550通りに絞り込み

 MI手法を活用したフレームワークに関して、MI技術と電子実験ノートを利用し、同社所有の過去と現在のデータを一元的に集約することで、材料の組成とプロセス条件の組み合せを最適化させた。その結果、今回の開発ケースで考えられる126万通りの組み合わせパターンを550通りに絞り込み、半年という短期間で目標性能を持つ無鉛圧電材料の開発に成功した。

MI手法を活用した材料開発のイメージ MI手法を活用した材料開発のイメージ[クリックで拡大] 出所:日本特殊陶業

 この手法では、データサイエンティストと熟練技術者が緊密に連携し、材料データと現場のノウハウを数値化した他、小規模量産設備による試作実験により、短期間で量産に移行しやすい材料の開発を実現した。

 開発した新規無鉛圧電材は、圧電定数がd33=400pC/Nで、耐熱性はキュリー温度でTc=200℃。固相反応法(一般的なセラミックス合成法)で量産可能で、作製工程で有機溶媒は不要だ。

 今後は、確立したMI手法を駆使し、無鉛圧電材料だけでなく、さまざまな材料の開発を加速していく考えだ。

MI手法活用の背景

 圧電材料は、電圧をかけると振動し、圧力をかけると電気が発生する特徴があり、ブザー、センサー、アクチュエーターなどに使用されているが、鉛を含む従来のものは環境と健康へのリスクがあるため、代替となる無鉛圧電材料の開発が推進されている。

 一方、同社は2000年頃からニオブ酸アルカリ系無鉛圧電材料を研究開発してきたが、従来の開発方法では材料の組成とプロセス条件の組み合わせが非常に多く、開発までに多くの時間を要していた。そこで、データサイエンスを用いたMI手法を活用することで、材料開発を高速化することとした。

 一般に無鉛圧電材料のようなセラミックス材料は、焼成や成形などの工程が性能に及ぼす影響が大きいため、MI手法を適用する場合、材料組成とプロセス条件の組み合わせが複雑化する。さらに、実験段階から量産に移行する場合も、複雑な製造プロセスが課題となり、これを解決するための開発にも時間を要するケースが多くある。このため、セラミックス材料においてMI手法を活用した量産ラインへの適用が可能な開発事例は多くない。

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