YTC Americaは、カーボンナノチューブをベースにバインダーフリー電極材料を開発。従来品と比べデバイス内部の電気抵抗が半減し、蓄電デバイスの寿命を伸ばすことに成功した。寿命を2倍に向上した他、急速充電/放電も可能になった。
矢崎総業は2025年6月26日、米国子会社であるYTC Americaがカーボンナノチューブ(CNT)をベースに、樹脂製バインダーを含まない蓄電デバイス向け電極材料(バインダーフリー電極材料)を開発したと発表した。従来品の電極に含まれていた樹脂製バインダーと導電除剤をCNTに置き換えることにより、デバイス内部の電気抵抗(内部抵抗)低減を可能に。充電速度を速め熱の発生を抑えることで、容量増加や寿命の延長にも成功した。
国内外では近年、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、化石燃料の使用量削減を目的にモビリティーの電動化などが推進されている。これに伴い、リチウムイオン電池やスーパーキャパシターといった大容量/高出力の蓄電デバイスの利用量拡大が見込まれている。
これらの蓄電デバイスは、いずれも樹脂製バインダーを含む電極が活用されている。絶縁性である樹脂製バインダーは、内部抵抗を増加させ、充放電速度の低下や電力性能を制限するだけでなく、充放電による樹脂製バインダーの劣化により、蓄電デバイスの寿命を短縮する。そこで、YTC Americaは今回の新材料を開発した。
新材料の製造では、CNTの分散に必要とされる界面活性剤や分散材を使用せずに、有機溶媒や水性溶媒を使える技術を活用している。これにより残留成分による性能への悪影響も未然に防げ、製造工程の簡略化も図れる。
YTC Americaは新材料を活用し、バインダーフリーチタン酸リチウム(LTO)負極とバインダーフリー(リチウム、ニッケル、マンガン、コバルト酸化物(NMC)正極を開発した。これらを組み合わせたリチウムイオン電池は、従来の樹脂製バインダーを含むリチウムイオン電池と比較し、内部抵抗が半減して寿命が2倍に伸びた。急速充電/放電での容量についても6分間(定格の10分の1の充電時間)の保持率が2倍に向上した。他の電極活物質を用いた場合も同等の性能向上を確認できた。
新材料で開発したバインダーフリー電極を備えたスーパーキャパシターも同様に、樹脂製バインダーを含む電極を使用した市販のスーパーキャパシターと比べ、内部抵抗が半減して寿命が2倍になり、充放電速度も向上した。
今後は実用レベルの実証をするために、外部パートナーとの連携を模索し、2027年以降の実用化を目指す。
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