武蔵精密工業は、フォーラム「Hybrid Super Capacitor Innovation Forum」で、蓄電デバイス「Hybrid Super Capacitor(ハイブリッドスーパーキャパシター)」に関する取り組みを紹介した。
武蔵精密工業は2024年12月4日、東京都内で蓄電デバイス「Hybrid Super Capacitor(ハイブリッドスーパーキャパシター、HSC)」を活用したソリューションを説明するフォーラム「Hybrid Super Capacitor Innovation Forum」を開催し、ハイブリッドスーパーキャパシターに関する取り組みを紹介した。
同社は現在、新事業として搬送用の自律移動ロボット(Autonomous Mobile Robot、AMR)やFA/IoT(モノのインターネット)、効率的に電力のコントロールを実現する工場向けのエネルギーマネジメントシステム(Factory Energy Management System、FEMS)、データセンターや生成AI(人工知能)、商用車、FEMSのエネルギー効率を最適化するエネルギーソリューションの事業などを展開している。
同社 代表取締役社長の大塚浩史氏は、「エネルギーソリューション事業は当社が最も期待している新事業だ。エネルギーソリューション事業のコアテクノロジーは当社が世界で初めて量産化に成功したハイブリッドスーパーキャパシターとなる」とコメントした。
ハイブリッドスーパーキャパシターは、蓄電性能に優れるリチウムイオン電池と高い出力密度を持つ電気二重層キャパシターを組み合わせた電池だ。特徴として、高入出力、広温度特性、長寿命、高い負荷変動応答性、安全性、エネルギー回生を持つ。
大塚氏は、「ハイブリッドスーパーキャパシターは30秒以下で急速充放電できる。主な用途としてはデータセンターの電力課題である『瞬時電圧低下/停電』と『急峻な電力変動』の対応を想定している。データセンターの瞬時電圧低下/停電に向けては、ハイブリッドスーパーキャパシターを備えたバックアップ装置『ENERGY STORAGE SYSTEM(ESS)400』を自社開発した。急峻な電力変動に対しては、ピークカットを目的にハイパースケーラーがハイブリッドスーパーキャパシターを用いてAIサーバ向け『ESS』を開発した」と話す。
同社のハイブリッドスーパーキャパシターはオラクルが開発を進めるゼタスケールのクラウドコンピューティングクラスタに採用されている。
大塚氏は、「今後は、GPUの進化とともに生成AI向けなどのデータセンターやAIサーバで出力密度が上がるとみている。現在のAIサーバは出力密度が120kWほどだが、将来は1000kWに達すると予測している。商用車の出力密度も現在は100kWほどだが、将来は600kWになると考えている。現状のハイブリッドスーパーキャパシターは第3世代だが、当社は高い出力密度に対応する第4世代の開発を進めている」と述べた。
また、山梨県北杜市の拠点である武蔵エナジーソリューションズはハイブリッドスーパーキャパシターセルの年間生産能力が20万セルだが、現在は150万セルへ拡張させる設備投資を行っており2024年度中に完了する見込みだ。さらに、ハイブリッドスーパーキャパシターの需要が当初の予測を上回るペースで増加していることを踏まえて、同社は山梨県南アルプス市で年間生産能力が500万セルの工場の建設を計画している。これにより、ハイブリッドスーパーキャパシターセルの年間生産能力を合計650万セルまで拡大する。
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