東北大学は、高価なナノ炭素を使用せずに、スーパーキャパシター並みの容量を得られるキャパシター用電極を開発した。安全で安価な青色顔料の鉄アザフタロシアニンを活性炭に分子吸着し、電極を作製した。
東北大学は2024年6月25日、高価なナノ炭素を使用せずに、スーパーキャパシター並みの容量を得られるキャパシター用電極を開発したと発表した。同大学発のベンチャーであるAZUL Energy、両者が共同で設置した「AZUL Energy×東北大学 バイオ創発 GX共創研究所」との共同研究による成果だ。
研究グループは、安全で安価な青色顔料の鉄アザフタロシアニン(FeAzPc-4N)を活性炭に分子吸着して電極を作製。混合比が異なる電極のキャパシター性能を、サイクリックボルタモグラム(CV)や充放電特性評価により測定した。
その結果、混合比30%までは線形に増加する容量が、40%を超えると増加率が上昇し、60%で活性炭単体の2.6倍となる907F/gACを得られた。表面の元素分析などから、混合比40%超においては活性炭がFeAzPc−4N分子を担持しきれず、結晶となったFeAzPc−4Nが容量に寄与していると示唆される。
(上)鉄アザフタロシアニン分子を分子吸着した活性炭の模式図。(左下)容量、活性炭単体に対する容量増加率。(下中央)20A/gACで充放電を繰り返した場合の容量と容量維持率。(右下)キャパシターセル2つを直列につないだ簡易充放電セルによるLEDの点灯実験[クリックで拡大] 出所:東北大学また、同じ混合比でも活性炭とFeAzPc−4N結晶を混合する場合より、溶媒を用いて分子担持した場合の方が、容量が大きくなることが分かった。
作製した電極を用いた実証では、20A/gACの高負荷領域における2万回の充放電やLEDの点灯実験に成功している。
電気二重層キャパシターは、電極表面に電気を蓄えて高速な充放電ができる反面、静電容量が小さい。容量を増やすために開発されたスーパーキャパシターは、材料に高価なナノ炭素が必要となることが課題だった。
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