MFTフレームワークを使うメリットはもう1つある。技術課題を抱えた技術者が検索エンジンで情報探索を行う際には、置かれている状況に応じたさまざまな視点から検索行動を行う。MFTフレームワークであらかじめ技術を要素分解した上で、各要素を題材にしたWebコンテンツを企画することで、情報を探すさまざまな分野の技術者に技術情報を見てもらうきっかけを作れるのだ。
最初のSTEPでより多くの用途仮説を出せるとよい。そのため、社内でなるべく多くの事業部のメンバーに参加してもらい、ブレーンストーミング形式でアイデア出しをするとよいだろう。
また最近では、ChatGPTを活用するのも効率的である。
といった質問をChatGPTに投げかけながら、MFTフレームワークを埋めていくと効率的である。
最後に、当社が支援した用途開発マーケティングの事例をいくつかご紹介する。
自動車業界向けに開発された力覚センサーを、他の有望な分野へ用途展開させることを目的に用途開発マーケティングを実施。
MFTフレームワークで技術を棚卸ししたうえで、同社の技術・製品を紹介する記事やコラムを掲載するオウンドメディアを立ち上げ、SEO対策とWeb広告を実施することで幅広い分野の技術者へ技術を認知させた。
その結果、ロボット業界において新たな用途を見いだした。市場性も高いことから、同社ではロボット業界向けの技術開発を本格展開するに至った。
電子機器に使われている放熱部材を、市場性の高い分野へ用途展開させることを目的に用途開発マーケティングを実施した。
すでに技術を紹介するWebページが存在していたため、技術コラムを量産し、そこで獲得したユーザーを技術紹介ページへ誘導する施策を採った。MFTフレームワークで技術の棚卸しを行った上で、技術コラムのコンテンツをライターが執筆した。
技術コラムの中で競合技術をテーマにした記事から流入したユーザーの問い合わせを多く獲得することに成功した。他の放熱部材と組み合わせて使用する用途など、当初想定していなかったニーズをつかむことができた。
超音波はんだごてに使用されていた超音波はんだ技術を、他の分野で活用してもらうために用途開発マーケティングを実施した。
マーケティング開始時点では、「誰でも簡単に接合できる」「異素材同士を接合できる」といった機能が求められているのではないかと想定していたが、マーケティングを継続する中で「低温で接合できる」という機能にニーズを発見した。
その後、低温接合に課題を抱えることの多い「アルミ同士の接合」という新たな用途を導き出し、多くの顧客獲得に成功した。
デジタルマーケティングの手法を工夫することで、想定していた顧客ターゲットだけでなく、技術の新しい用途を見つけることができ、新たな市場開拓の機会をつかめる。より多くの製造業がこの手法に気付き、今回事例として紹介した企業のように用途開発マーケティングに積極的に取り組むことで、技術の可能性を拡大するきっかけとなることを期待している。
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徳山正康(とくやま まさやす)
テクノポート株式会社 代表取締役
製造業専門のWebマーケティング事業と技術ライティング事業を手掛けるテクノポートの代表を務める。「技術マーケティングで日本の製造業に追い風を」を経営理念に、これまでに数名の町工場から一部上場のメーカーまで、累計1000社を超える製造業を支援し、数多くの企業の経営革新を実現。
グロービス経営大学院(MBA)卒業、(社)日本ファミリービジネスアドバイザー協会 フェロー、(社)Reboot 理事、(社)Glocal Solutions Japan 認定専門家。
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