自社技術が適応する新しい市場を探す、「用途開発マーケティング」とは何か間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(6)(1/2 ページ)

コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第6回のテーマは「用途開発マーケティング」だ。

» 2023年07月27日 08時00分 公開

 技術を既存市場に限定せず、他の有望な分野へ展開することで新たな市場を開拓する、「用途開発マーケティング」という手法が存在する。当社はこれまでに数多くの製造業に対するデジタルマーケティングの支援を行っており、その中で用途開発の成功を目の当たりにしてきた。そして、これが偶然の産物でなく、再現性を持った戦略として展開できるかどうかを試行錯誤しながら探求している。

 本記事では、デジタルマーケティングを活用することにより、新しい用途の開発を偶然の出会いに頼るのではなく、意図的に可能性を高めていくための手法を解説する。

用途開発マーケティングとは

 最初に用途開発マーケティングについて説明する。用途開発マーケティングとは、保有している技術を既存の領域ではなく、新しい領域に展開することにより、激しい競争を避けつつ、技術を探求する人々から高い評価と対価を得るための戦略である。

用途開発マーケティングとは[クリックして拡大] 出所:テクノポート

 既存の技術を既存の市場に提供し続けると、新たな競合企業が参入し、価格競争が激化する恐れがある。これにより、技術の提供価格が徐々に下がってしまうため、企業は適切な対策を講じる必要がある。この状況で、既存の市場に対して新しい技術を開発して提供するという選択肢が考えられる。しかし、市場が縮小している場合、成長の余地が限られていることもある。

 そこで、用途開発マーケティングという手法が重要になってくる。用途開発マーケティングでは、既存の技術を新しい市場に適応させ、用途を拡大することを目的とする。適切な分野が見つかれば、技術を販売するチャンスがあり、また、成長性の高い市場への参入が可能となる。

再現性のある手法が少なく難しい

 用途開発マーケティングの難しさは、一般的なマーケティングとは異なる考え方や進め方が必要とされる点にある。一般的なマーケティングでは、はじめにペルソナを設定するなどして、ターゲットとなる顧客の解像度を高めることが定石となっている。

一般的なマーケティングと技術マーケティングの違い[クリックして拡大] 出所:テクノポート

 しかし、用途開発マーケティングの場合、ターゲットを絞りすぎると現状想定できている用途で技術を使っている見込顧客以外に情報が行き渡りづらくなってしまい、想定外の用途の発見にはなかなか至りづらい。

 用途開発マーケティングは、製造業において多くのメリットが期待できる取り組みである。しかし、確立された再現性のある手法が存在しないうえ、成功事例も少ないため、積極的にこのアプローチを採用している企業はまだそれほど多くないようだ。

用途開発マーケティングの推進方法

 次に、Webを活用した用途開発マーケティングを再現性のある取り組みとして推進するための方法を解説する。これは、当社が製造業のデジタルマーケティングを支援し、成功事例を研究する中で開発した独自の手法である。

用途開発マーケティングのステップ[クリックして拡大] 出所:テクノポート

 当社が支援する用途開発マーケティングでは、まず技術の棚卸しを行い、その後にWebサイトやコンテンツの企画を行っていく。

 この技術の棚卸しを行う際に、MFTフレームワークを使い技術を要素分解していくとよい。MFTフレームワークの「MFT」とは、Market(市場)、Function(機能)、Technology(技術)を指し、市場と技術の間にある機能に着目することで、技術の活用が可能な市場を幅広く検討できるフレームワークである。技術と市場の間に「機能」を挟むことがポイントだ。このフレームワークを使うことで、用途仮説を幅広く効率的に見つけ出せるようになる。

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