衣類に熱転写したセンサーで汗中イオン濃度をリアルタイムに測定：医療機器ニュース

東京理科大学は、人の汗に含まれるさまざまなイオンの濃度をリアルタイムで測定できるウェアアラブルデバイスを開発した。小型のイオンセンサーを衣類に熱転写印刷して作製するため非侵襲的で、熱中症などの早期発見に役立つことが期待される。

[MONOist]

　東京理科大学は2023年7月6日、人の汗に含まれるさまざまなイオンの濃度をリアルタイムで測定できる、非侵襲的なウェアアラブルデバイスを開発したと発表した。小型のイオンセンサーを衣類に熱転写印刷して作製する。

研究の概要［クリックで拡大］ 出所：東京理科大学

　今回開発したイオンセンサーは、Cl⁻、Na^＋、K^＋、NH₄^＋などのイオンを、他の成分に影響を受けることなく定量化できる。衣類に熱転写印刷して取り付けるため、肌に直接センサーが触れることがなく、装着時の圧迫感や皮膚のかぶれなどを防げる。

　熱転写印刷は、平らな基板上に作製したセンサーを、熱と圧力を加えて布に転写する方法だ。これにより、粗めの布や紙の上にも高精度なイオンセンサーが成形できるようになった。

　健康な男性のエアロバイク運動において、開発したCl⁻イオンセンサーの挙動を確認したところ、発汗量、血中イオン濃度、脱水度の指標である唾液浸透圧と、Cl⁻濃度が相関することが分かった。特に唾液浸透圧との相関が高く、Cl⁻イオンセンサーの応答が脱水度の指標として使用できることが示された。

　汗中イオン濃度を測定する軽量のウェアラブルデバイスは、これまでにさまざまなタイプが開発されている。しかし、シールタイプのデバイスは汗による不快感があり、布地に直接センサーを成形する従来手法は、繊維表面の凹凸によりデバイスの精度が低くなるという問題があった。

　今後、Tシャツやリストバンド、インソールなどへ取り付けて健康状態をリアルタイムでモニタリングできるようになることで、運動時や作業中の脱水症状、熱中症の早期発見につながることが期待される。