第一セラモは、国産MEX方式金属AM(付加製造)普及プロジェクトで、金属粉末と樹脂を混錬し造粒したコンパウンドの開発を担当しており、主に金属系とセラミックス系のコンパウンドの開発を進めている。
既に、コンパウンドのペレット材料として、金属系ではローカーボンタイプのステンレス「SUS316L」と析出硬化系ステンレス「SUS630(17-4PH)」、セラミックス系では「アルミナ」と「ジルコニア」の開発が完了している。現在は金属系の「チタン合金(Ti64)」と「純銅(Cu)」を開発中だ。今後は、金属系では「超硬合金」と「インコネル」を、セラミックス系では「非酸化物セラミックス」の開発を予定している。
第一セラモ 代表取締役社長の川北晃司氏は「SUS316L、SUS630は既に販売しており、1kg当たりの価格は2万〜3万円で提供している」とコメントした。
また、ペレット式金属3Dプリンタと比べ安価なフィラメント式金属3Dプリンタに対応するため、「巻けるコンパウンド」として、柔軟性と押し出し性に優れるフィラメントを開発した。なお、金属を混合したこれまでのコンパウンドは金属の特性が影響し、曲げられるワイヤ形状のフィラメントを作成することが難しかったという。
そこで、第一セラモは柔軟性に優れるコンパウンドを開発し、フィラメントの材料に使用することで、巻けるコンパウンドの開発に成功した。現在は、SUS316Lとジルコニアなどのコンパウンドを用いたフィラメントの改良を進めており、今後販売する予定だ。
エス.ラボは、専門知識がなくても簡単に使えるMEX方式金属3Dプリンタの開発を担当している。また、各材料の標準造形条件を設定できる機能や使い勝手の良い操作性の実現、3D造形限界形状の指標(デザインガイド)提供を推進している。
こういった目標を反映したMEX方式の金属3Dプリンタとして、ペレット式の「GEM200GDH」の開発を完了し既に販売しており、フィラメント式の「Margherita」は開発中で2023年内の発売を予定している。
エス.ラボ 代表取締役社長の柚山精一氏は「GEM200GDHの価格は1000万〜2000万円で、Margheritaの価格は100〜199万円を予定している。Margheritaは安価なため中小企業でも導入しやすい」と語った。
GEM200GDHでは、成形物の欠陥をゼロとする目的で、機体に改良を施し、成形物のエッジの膨らみや外周のうねりを改善している。
今後は、寸法安定性と欠陥レスを目指し、ペレット式とフィラメント式のMEX方式金属3Dプリンタの造形ノウハウを蓄積するとともに、ペレット式のデザインガイド構築を進めるという。
島津産機システムズは脱脂焼結技術の開発を担当し、各材料の脱脂パターンと焼結パターンを確立するとともに、専門知識がなくてもサンプルのパラメータを入力することで自動で脱脂焼結処理パターンを生成する機能を備えた小型脱脂焼結炉の開発を進めている。
こういった条件に対応し、溶媒脱脂不要な処理パターンを構築できる小型脱脂焼結炉として「VHS-CUBE」を開発し既に販売している。VHS-CUBEは、搭載された焼結炉内の温度を最高で1600℃まで上げられるとともに、有効寸法範囲内温度分布±2℃の優れた熱処理性能を実現する。さらに、搭載されたタッチスクリーン上に操作手順を表示するため扱いやすい。
VHS-CUBEを用いて、島津産機システムズは、ペレット式のSUS316LとSUS630の脱脂パターンおよび焼結パターンを既に確立しており、現在は両素材に対する自動パターン生成機能の開発を検証している。加えて、純銅とTi64の脱脂パターンと焼結パターンの確立も検証中で、両素材の自動パターン生成機能の開発は今後実施する予定だ。
島津産機システムズ 執行役員の高橋伯氏は「一例を挙げると、VHS-CUBEを用いてペレット式のSUS316LとSUS630の標準試験片形状における脱脂焼結パターンを確立し材料特性基準を満足した。VHS-CUBEによりSUS316Lを焼結した試験体では、MIMおよび日本産業規格(JIS)の基準を全て満足し、密度は競合企業の成形物以上を実現し、金属で重要なカーボン値も小さかった」と述べた。
一方、VHS-CUBEによりSUS630を焼結した試験体でもMIMおよびJISの基準を全て満足し、密度も競合企業の成形物以上を達成した。
なお、VHS-CUBE、第一セラモの一部ペレット材料、GEM200GDHをセットにした3000万円からのミニマムプランを販売しているという。また、当面は国産MEX方式金属AM普及プロジェクトの参加企業を増やさず、国内企業を対象に同プロジェクトで開発した製品を販売する方針を示した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.