サントリーホールディングスは、山梨県で水素製造装置「やまなしモデルP2Gシステム」を用いて、グリーン水素の製造に本格的に乗り出す。
サントリーホールディングスは2025年6月11日、東京都内とオンラインで記者会見を開き、「サントリーグリーン水素ビジョン」を発表した。
水素は、燃焼時にCO2を排出しない他、地球上のあらゆる化合物から調達できる。質量当たりの熱量も天然ガスの2倍以上と大きい。水素はエネルギーと水さえあれば水素製造システムから生産可能なため地産地消にも応じる。水素のサプライチェーンは化石燃料と比べて短くエネルギー安全保障の観点も有効で、物流網や利用などで生じるCO2も減らせるため、クリーンエネルギーとして注目されている。
グリーン水素は、再生可能エネルギーの活用によって製造工程を含めたCO2の排出量がゼロの水素だ。一方、市場で販売されている大半の水素は化石燃料を用いて製造されたグレー水素となっている。
こういった状況を踏まえて、サントリーホールディングスが生産を計画しているのが「サントリーグリーン水素」だ。サントリーグリーン水素は、国内工場の水源エリアとして利用している「天然水の森」で得られた地下水100%を、プロトン交換膜(PEM)を使用し電気分解するPEM型電解槽を備えた「やまなしモデルP2Gシステム」を活用し、太陽光発電や水力発電で創出した再生可能エネルギー100%を用いて電気分解し、得られるものとなる。
やまなしモデルP2Gシステムは、再生可能エネルギー由来の電力からグリーン水素を製造し、水素を燃料として利用することで脱炭素化を実現する技術で、山梨県、東レ、東京電力ホールディングス、東光高岳が開発を進めている。
サントリーグリーン水素の生産場所となるのは山梨県だ。山梨県が選ばれた要因には、「未利用の再エネ発電の余力が52万キロワット(kW)ある」ことに加えて、天然水の森 南アルプス(山梨県北杜市)の豊富な水資源を使って水素を製造できることが挙げられる。山梨県で生産したサントリーグリーン水素は同県内や東京都の製造業に供給する予定だ。東京都への供給に関しては「新エネルギーの推進に係る技術開発支援事業」で「水素エネルギー転換のための高圧水素ガス新流通形態・利用拡大実証事業」として採択されている。
サントリーホールディングス 常務執行役員 サステナビリティ経営推進本部長の藤原正明氏は「サントリーグループでは、製品の提供を通じた豊かな生活文化創造とともに、利益三分主義に基づいた、社会/環境活動も行ってきた。これまでの歴史で培った事業活動とサステナビリティ活動のエッセンスをブレンドし、サントリーグリーン水素事業ではさらなる新しい価値の創造を目指したい」とコメントした。
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