サントリーが挑むグリーン水素製造 明らかになった製造規模や計画とは脱炭素(2/3 ページ)

» 2025年06月12日 06時15分 公開
[遠藤和宏MONOist]

サントリーグリーン水素生産のロードマップとは?

 サントリーホールディングスでは、やまなしモデルP2Gシステムを用いた山梨県でのサントリーグリーン水素生産に関して、2025年秋~2027年を対象とした「フェーズ1」と2027年以降の「フェーズ2」、2030年以降の「フェーズ3」を計画している。

やまなしモデルP2Gシステムの活用タイムライン やまなしモデルP2Gシステムの活用タイムライン[クリックで拡大] 出所:サントリーホールディングス

 フェーズ1では、日本政府が立ち上げた「グリーンイノベーション基金事業」で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の採択を受けた活動として、やまなしモデルP2Gシステムを用いてグリーン水素の製造/利用を実証する。

 具体的には、山梨県北杜市のサントリー天然水 南アルプス白州工場とサントリー白州溜蒸所に隣接する県有地で2024年2月に建設工事を開始したやまなしモデルP2Gシステムで生産したサントリーグリーン水素を、天然水工場における水素ボイラーの稼働や熱殺菌工程に使う。ウイスキーの蒸留工程において高温で加熱する「直(じか)火蒸留」でのサントリーグリーン水素の利活用も検討している。藤原氏は「将来は物流などバリューチェーンへの適用や外販も計画している」と述べた。

サントリーホールディングスの水素活用案 サントリーホールディングスの水素活用案[クリックで拡大] 出所:サントリーホールディングス

 同社は2024年4月11日に、直火蒸留を水素専焼で行う実証実験に成功した。蒸留したニューポット(蒸留を終えたばかりの無色透明な原酒)は、従来の都市ガスで直火蒸留を行った時と変わらない品質であることが確認された。

 建設が進められているやまなしモデルP2Gシステムは2025年5月末時点で、建屋、パイプライン、ボイラーは完成しており、今後は水電解装置の設置など最終の仕上げを行う。完成したやまなしモデルP2Gシステムにおける24時間365日フル稼働時の施設能力は、水素製造能力が年間2200トン(t)で、電解装置能力は16MWとなる。CO2排出量の削減量は1万6000tで、水素パイプラインの総延長は約2km、敷地面積は3000m2だ。サントリーホールディングスは需要量に合わせてこのシステムを運用する。

建設するやまなしモデルP2Gシステムの概要 建設するやまなしモデルP2Gシステムの概要[クリックで拡大] 出所:サントリーホールディングス
やまなしモデルP2Gシステムは2025年秋稼働に向け工事中 やまなしモデルP2Gシステムは2025年秋稼働に向け工事中[クリックで拡大] 出所:サントリーホールディングス

 フェーズ1の実施に当たって、サントリーホールディングスは、東レ、東京電力ホールディングス、東京電力エナジーパートナー、カナデビア、シーメンス・エナジー、加地テック、三浦工業、ニチコン、やまなしハイドロジェンカンパニーと協力する。

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