レゾナック、日本製鉄、日鉄エンジニアリング、富山大学の4者は、製鉄所や火力発電所などから排出されるCO2由来のグリシン製造技術やプロセスの開発に向けて取り組みを本格化する。
レゾナック、日本製鉄、日鉄エンジニアリング、富山大学の4者は2025年6月13日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発」において、「CO2由来メタノール経由青酸、グリシン製造の研究開発」を提案し、同年5月1日に採択されたと発表した。
国内では気候変動への対策としてCO2排出量削減が課題となる中、CO2を資源として利用する技術が注目されている。
グリシンは、農薬や健康食品、食品類、電子材料に使用される化学品だ。現在は主に、ナフサを原料とするプロピレンや天然ガスを原料とするメタノールから中間体を経て製造されている。しかし、化石燃料由来ではなく、製鉄所や火力発電所などから排出されるCO2を原料としたメタノールから製造できれば、カーボンリサイクルの促進や大幅なCO2排出量の削減につながる。
4者は、今後も需要拡大が見込まれるグリシンを、化石燃料由来から、製鉄所や火力発電所などから排出されるCO2由来に転換することで、カーボンリサイクルの促進を図る。
今回のプロジェクトでは、製鉄所や火力発電所などから排出されるCO2からグリシンを一貫製造する技術を確立する。
具体的には、2020~2024年度に日本製鉄、日鉄エンジニアリング、富山大学らが実施した「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発/化学品へのCO2利用技術開発/CO2を原料としたパラキシレン製造に関する技術開発」において得られた成果を用いて、さらなる収率向上を目指して、低温下でメタノールを合成する実用的な触媒プロセスを開発する。
一方、レゾナックは、プロピレンからアンモ酸化反応によりアクリロニトリルを製造するプラントを川崎事業所(神奈川県川崎市)に有している。このプラントでは、プロピレンと同時に、天然ガス由来の高純度メタノールを投入して得られる中間体を原料として、付加価値の高いグリシンを高品質で安定的に一貫製造する技術、ノウハウを保有している。
CO2由来メタノールは、化石燃料由来と異なる種類や量の含有物が想定されるが、レゾナックが保有する製法技術をベースに、これらを工業スケールで使いこなすための、新しいアンモ酸化反応の触媒プロセスを構築、最適化する。現行のグリシン品質を保持しつつ、ライフサイクルアセスメント(LCA)の観点でCO2排出量の大幅削減に貢献する技術を開発し、早期の社会実装を目指す。
各者の役割に関して、CO2由来メタノール合成触媒の改良は日本製鉄、レゾナック、富山大学が、CO2由来メタノール合成触媒の量産化は日本製鉄、日鉄エンジニアリング、レゾナックが、メタノールからの中間体ならびにグリシン製造プロセスの開発はレゾナックが担う。
CO2由来メタノールからグリシン製造の一貫最適プロセスの開発は4者が、中間体およびグリシン製造にマッチしたCO2由来メタノール合成プロセスの検討は日本製鉄、日鉄エンジニアリングが、CO2由来メタノールを用いた中間体、グリシン製造プロセスの最適化はレゾナックが担当する。
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