矢野経済研究所は「3Dプリンタ材料の世界市場に関する調査」の結果を発表し、方式別動向、参入企業動向、将来展望について明らかにした。2021年の3Dプリンタ材料の世界市場規模は、3111億5300万円(前年比19.3%増)を見込む。
矢野経済研究所は2022年4月25日、「3Dプリンタ材料の世界市場に関する調査」の結果を発表し、方式別動向、参入企業動向、将来展望について明らかにした。
2021年の3Dプリンタ材料の世界市場規模(エンドユーザー購入金額ベース)に関しては、前年比19.3%増の3111億5300万円を見込む。
方式別で見ると、試作品の造形を中心に用いられる材料噴射(MJT:Material Jetting)方式については、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を大きく受け、市場が伸び悩んだと推察する。同じく、液槽光重合(VPP:Vat Photopolymerization)方式に関しても試作品向けは低調であったが、医療分野での需要が下支えした。
材料押出(MEX:Material Extrusion)方式は、産業向けが回復基調に転じたことに加え、コンシューマーおよび医療向けの需要が堅調に推移。粉末床溶融結合(PBF:Power Bed Fusion)方式では、金属粉末材料については航空産業の不調が影響したことで伸び悩んだものの、樹脂粉末材料に関しては治工具や実部品向けの需要が拡大した。
さらに、コンシューマーおよび産業向けで伸びを示す、MEX方式3Dプリンタの材料市場動向を注目トピックスに挙げる。
コンシューマー向けでは、MEX方式3Dプリンタの装置価格の低下によって、利用者の裾野が広がっている状況にある。また、2020年の初頭はCOVID-19の影響を受けて、マスクやフェイスシールドの造形需要が伸びた他、コロナ禍で巣ごもり生活が続く中、DIYやホビー用途での需要も急増。こうした伸びは2021年前半まで続いたとしている。
一方、産業向けでは、3Dプリンタの性能向上に加え、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)やPEI(ポリエーテルイミド)をはじめとするスーパーエンジニアリングプラスチックや、GF(ガラス繊維)/CF(炭素繊維)強化グレードなど、物性が高く、実部品向けとしての利用も可能なフィラメントが製品化されてきた。コロナ禍においては、製造現場の稼働率低下の影響を受けていたが、2021年後半からフィラメントの需要は回復に転じているという。
今後も3Dプリンタは、造形スピードの高速化とともに、機械的特性や耐久性を高めた材料開発などが進展するとみられ、試作品や治工具、さらには少量〜中量生産用途での導入が進むと考えられる。これに伴い、3Dプリンタ材料世界市場における2021〜2026年までの年平均成長率(CAGR)は24.0%となり、2026年には市場規模が9125億3200万円になると予測し、1兆円市場が視野に入るとの見通しを示す。
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