電通国際情報サービス(ISID)は2022年9月6日、新製品発表会を開き、ドライビングシミュレーターで乗員の感性評価を行えるレンタル型スタジオ「VDX Studio(VDX=Virtual Driving eXperience)」について紹介した。
電通国際情報サービス(ISID)は2022年9月6日、新製品発表会を開き、ドライビングシミュレーターで乗員の感性評価を行えるレンタル型スタジオ「VDX Studio(VDX=Virtual Driving eXperience)」について紹介した。
ISIDは2015年に、バーチャル開発の品質向上のため国内自動車メーカーとともに小型ドライビングシミュレーターの共同開発を始めた。小型のドライビングシミュレーターは執務室に設置してエンジニアが仕様やパラメータをすぐに試すことができるのが強みだ。検討から体感、その結果を分析するサイクルを高速に進めることが可能になる。
2018年に1号機を納入後、表示系の強化や自動運転分野への適用拡大などを進め、「VTD(バーチャルテストドライブ)」として展開してきた。自動車業界では用途に合わせて大型、中型、小型のドライビングシミュレーターを使い分けることが重要になっており、ISIDは小型を得意とする。
VTDは、ドライビングシミュレーター単体だけでなく、関連する領域の知見や技術を生かしたトータルソリューションだ。ビジュアライゼーションに特化した社内の組織や、実験やCAEなどエンジニアリング面のコンサルティングを提供できるISIDグループのエステック、国内外のベンダーとの提携関係も生かす。開発プロセス、手法のコンサルティング、AI(人工知能)や機械学習、データの分析と管理といった領域でもサポートする。
VDX Studioは、小型のドライビングシミュレーターであるVTDを提供する中で、車両がまだない開発の初期段階で人間中心の感性評価を実施したいというニーズの高まりを受けて開設を決めた。感性評価を行うには、車両のモデルの精度、車両の挙動に伴う高周波振動の再現の正確さ、乗員が感じる速度感や加速度の再現に加えて、実車と同等の感じ方が可能になる没入感やリアリティーも求められるため、これに対応した機材をそろえている。
VDX Studioはエステックの技術開発センター(横浜市金沢区)に設立。導入しているのは、中小型のドライビングシミュレーターだ。中型と小型のそれぞれの利点を取り入れ、車両の細かな動きの表現と、業務の変化に対応した上物の交換やソフトウェアの入れ替えなどの柔軟性を両立する。
音や振動、映像をリアルに再現するため、機材としてはドライバーの視界の左右と正面をカバーする超高画質で大画面のCrystal LED、フォトリアルな映像を可能にするUnreal Engine、20Hzまで加振できるモーションプラットフォーム、高周波振動を表現する電磁加振機で構成されている。
また、テストコースでの走行データと合わせ込んだ高精度な車両モデルや、リアルな音の聞こえ方を再現する立体音響システムも導入している。さらに、実在する量産車の内装を再現したモックアップ、実車相当の剛性を持つステアリングやシートを備える。加速感を感じられる音づくりや、自動運転中に運転以外のタスクを行う場面を想定したHMI(ヒューマンマシンインタフェース)の評価にも適用できる。ドライバーの視線や生体情報、行動、走行ログ、運転操作などを同時計測する「ドライバー統合計測システム」も併せて提供し、人の研究にも使える。
VDX Studioでは、利用する企業のコンセプトや実現性を検証するコンサルティングサービス、1日単位で設備をレンタルできるウォークインサービス、試験を受託するプロフェッショナルサービスを提供する。ウォークインサービスでは、自社で開発中のデータを持ち込むことができる他、要望に合わせた車両モデルや走行コースを開発して提供することも可能だ。実在するテストコースをバーチャルで再現して車両性能評価を行うこともできる。プロフェッショナルサービスは、実車のテストをバーチャルなテストに置き換えることで、期間やコストを抑えながら実車テストよりも多くのデータを収集する。
VDX Studioは高度な感性評価が行えるだけでなく、検証用の実車に関する制約の解消、走行テストの効率化、リアルでは困難な検証、体感を通じた自動車メーカーとサプライヤーでの合意形成、リアルなプロトタイプを使った市場調査など、ドライビングシミュレーターにとどまらないさまざまな価値を提供するとしている。
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