パナソニック オートモティブ社は、自動車用コックピットのHMI(Human Machine Interface)の検証作業を効率化するために開発したVR(仮想現実)シミュレーターを披露。自動車メーカー向けのHMI設計で仕様変更件数を約30%削減するなどの効果が得られたという。
パナソニック オートモティブ社は2020年1月20日、横浜市内で会見を開き、自動車用コックピットのHMI(Human Machine Interface)の検証作業を効率化するために開発したVR(仮想現実)シミュレーターを披露した。自動車メーカー向けのHMI設計で仕様変更件数を約30%削減するなどの効果が得られたという。
自動車用コックピットを含めたさまざまな機器のUI(ユーザーインタフェース)や、そのUIから得られる体験となるUX(ユーザー体験)は、スマートフォンの登場以降大きく変化している。同社 オートモティブ社 HMIシステムズ事業部 ディスプレイビジネスユニット 第三商品部 総括担当の遠藤正夫氏は「1990年代は高機能で習熟を要するようなUIが、複雑だからこそ所有欲を満たせるということで評価されていた。しかし、アップルの『iPhone』以降はシンプルだからこそパーソナライズができるUIが高く評価されるようになった。そして2020年からは、アマゾンのECサイトのレコメンド機能のように自身が意識して操作することなく得られるUXが求められるようになる。ユーザー価値として、人がモノに合わせるのではなく、モノが人に合わせるようになってきているのだ」と語る。
パナソニックのオートモティブ社では、このようなユーザー価値の変化を受け、UI/UXデザインによる商品価値向上の取り組みを進めている。「人の人生約80年のうち、寝ている時間は約10年、クルマを含めた移動の時間は約5〜7年あるといわれている。そういった人の多くの時間を使う空間で、UI/UXとして何ができるかを考えていく。また、従来は購入してもらったらUIはそこから変わらなかったが、クルマであれば所有するであろう約10年間の好みや周辺環境の変化にどう対応するかも必要になってくる。そこに、パナソニックならではのテクノロジー活用をデザインとして入れ込んでいきたい」(遠藤氏)という。
従来、自動車用のシミュレーターというと、開発しているハードウェアの熱やノイズ、搭載スペースといった物理的な仕様を評価するために用いられていた。一方、遠藤氏が手掛けるHMIのシミュレーターはなく、机上や静止画などで確認するのが一般的だった。「作ってみないと分からないわけで、手戻りが起こるとその分コストがかかってしまう」(同氏)。
そこで、パナソニックが保有するプロジェクターなどの光学機器技術や映像技術に加えて、同社の研究開発部門で蓄積されているVR関連技術などを活用して、今回のVRシミュレーターを独自に開発した。
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