これらの取り組みを進めた上での中期経営指標(KGI)として、累積営業キャッシュフローで2兆円、ROE(自己資本利益率)10%以上、累積営業利益1兆5000億円という目標を示した。楠見氏は「今までの稼いだ営業利益と比べれば意欲的に見えるかもしれない。この目標値のベースとして、これから起きる地政学的問題による原材料費の高騰などは盛り込んでいない。ただ、原価力は大きく改善余地があると見ている。これまででその手触り感が得られている。そういう意味で、目線を上げて取り組みたい」と考えを述べる。
さらに、各事業会社が個別に行う投資額と別に、6000億円の戦略投資額を用意し、約4000億円を成長領域に、2000億円を技術基盤構築に投資する。成長領域として位置付けているのが、車載電池領域、サプライチェーンソフトウェア領域、空質空調領域だ。車載電池領域では、EV(電気自動車)の進化や普及に適合した電池セル性能と安全性、コスト力を実現する投資を進める。具体的な取り組みの1つとして、2022年2月に和歌山工場(和歌山県紀の川市)に新型車載用リチウムイオン電池「4680」の生産設備を設置。高生産性ラインの実証を行い、2023年度(2024年3月期)の量産開始を目指す。
サプライチェーンソフトウェア領域では、買収したBlue Yonder(ブルーヨンダー)の基盤を生かし、サプライチェーン全体の最適化に向けた競争力強化を推進する。空質空調領域では、独自技術と空質空調を融合した連携システム化を推進し、欧州や中国、日本での販売、サービス基盤の整備と連携商材の拡充を進める。
一方、技術基盤投資としては、1つは水素エネルギーへの投資を進める。水から水素を作る水素製造の高効率化や、水素から電気に変換する燃料電池の効率化など、水素エネルギーデバイスの高度化を推進する。加えて、分散型電源制御システムへの投資も強化し、水素を中心とした社会のクリーンエネルギー化移行を加速する。
もう1つがCPS(サイバーフィジカルシステム)への投資だ。米国子会社のYohanaの強みを生かし、ハードウェアとサービスによる暮らし体験価値向上を実現する基盤をさまざまな事業で展開する他、人の内面や状態の正確な把握による人の高度なモデル化の実現を目指す。
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