「失われたものを取り戻す」パナソニック楠見新社長が求めるトヨタ式現場力製造マネジメント インタビュー(1/4 ページ)

2021年4月にパナソニックのCEOに就任し、同年6月に代表取締役 社長執行役員となった楠見雄規氏が報道陣の合同インタビューに応じ、事業会社制の狙いや2年間のオペレーション力強化への取り組み、パナソニックの強みなどについて説明した。

» 2021年07月13日 06時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 2021年4月にパナソニックのCEOに就任し、同年6月に代表取締役 社長執行役員となった楠見雄規氏が報道陣の合同インタビューに応じた。

 楠見氏は、家電製品などを扱うアプライアンス社の副社長などを務めた後、車載関連事業に関わり、2019年4月からは、オートモーティブ社 社長に就任し、トヨタ自動車との車載電池合弁などで主導的な役割を果たした。CEO就任後の2021年5月には経営方針を発表し、パナソニックの経営理念に立ち返ることや、2年間の事業競争力の強化、環境問題に関する取り組みの強化などの方針を示している。

 インタビューでは、あらためてパナソニックの立ち返るべき経営理念の重要性や、事業会社制での考え方、パナソニックとしての強みと弱みなどについて考えを語った。

経営理念への立ち返り現場力強化へ

―― パナソニックの新社長として、取りまとめていくビジョンについてどう考えるのか。

楠見氏 創業者の基本的な理念に立ち返るということだと考えている。綱領として示す「産業人たるの本分に徹し社会生活の改善と向上を図り世界文化の進展に寄与せんことを期す」が、創業者(松下幸之助氏)が発した目指すべきところだ。つまり、社会や世界の課題解決に貢献することが基本的な考えだといえる。

 ただ単純に社会に貢献するだけでなく、かつてのパナソニックは「他社に負けない立派な仕事をして社会に貢献する」ということを実現できていた。これができていれば、顧客から選んでもらえるようになり、結果として報酬につながり、次の成長投資に回すことができるようになる。かつてはこうしたサイクルを作ることができていた。逆に今収益性に問題があるのは「他社に対して立派な仕事ができていないからだ」ということだと考えている。

photo パナソニック 代表取締役 社長執行役員 CEOの楠見雄規氏 出典:パナソニック

 創業者の右腕として活躍された高橋荒太郎氏は「立派な仕事」の内容として「品質」と「コスト」と「サービス」を挙げ「ここで負けてはいけない。負けているならば速やかに改革を行わないといけない」という話をしていたが、現在のパナソニックが成長できていないのはこの「品質」「コスト」「サービス」の3つのどこかで負けているからだといえる。

 この課題の解決がまず重要だということで、2021年5月の経営方針発表では「2年間は全事業で競争力強化に集中する」ということを話した。パナソニックにはさまざまな事業があり、1つのコンセプトや言葉で語ることは難しいが、基本方針に立ち返れば、各事業においてはやるべきことははっきりしてくると考えている。2022年4月からは事業会社化(※)を行うが、事業会社それぞれが主役として、自主責任で強みを生かした「社会への貢献」と「立派な仕事」を実現できれば、成長に転じることができると考えている。

(※)事業会社化:持ち株会社制への移行のことを指す。パナソニックでは「あくまでも主役は事業会社」という方針で「持ち株会社化という表現は使いたくない」(楠見氏)としている。

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