連載第2回では、図2のようなグラフまで描いてみたものの、平均コンプライアンスfを最小化する変数nとaを求めるのに失敗しました。
制約条件を以下に記します。aをnの関数として制約条件をグラフにしましょう。式3を変形して、aは式26のように表されます。
Vo=0.02[m2]、b=0.1[m]、L=1.0[m]としてグラフを描くと、図3のようになります。そして、図3のグラフを図2の等高線に重ね合わせたものが図4です。今回使ったラグランジュの未定乗数法では、図4の黒色の線上において、平均コンプライアンスf(n,a)が最小になる位置を求めたことになります。その位置は、図4の黒丸(●)で示したn=0.5[-]となります。
以上が、最小値問題の例です。今回は、片持ちはりの平均コンプライアンス最小化問題(剛性最大化問題)を、ラグランジュの未定乗数法を使って解きました。この方法を「最適性基準法」と呼びます。また、ラグランジュ未定乗数λを使わずに、式3を式2に代入して問題を解くこともできます。この方法を「勾配法」と呼びます。
次回は、いよいよ「トポロジー最適化」です。トポロジー最適化でも、ラグランジュの未定乗数法を使って平均コンプライアンス最小化問題を解きます。 (次回へ続く)
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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