設計が終わってから解析している人、本当にそれで大丈夫? 手戻り発生を極力防ぐ解析のタイミングとは
前回の記事で僕が一番言いたかったこと。それをもう一度繰り返しておきます。
設計者向けの解析ソフトでは、構造の固定を意味する拘束条件も、構造に掛かるチカラを表す荷重条件も、シャレたアイコンで表示されています。それも設計者に分かりやすい言葉で各条件に名前が付けられています。
皆さんが選んだ「分かりやすい言葉」で指定した拘束条件や荷重条件は全て節点の自由度に落とし込まれて設定されます。『フリーソフトだけで構造解析をやってみる(上・下)』を実践していただければ、このあたりのことは感覚的に実感できると思います。
これまで、お客さまのさまざまな解析モデルを見てきましたが、「構造は微に入り細に入り、丁寧に作ってあるのに、拘束条件や荷重条件がかなりいいかげん」というのが、結構な割合でありました。構造だけを丁寧に作っても、荷重と拘束のモデル化が粗いと、解析結果は粗い方に引きずられてしまいます。
このことは、掛け算の有効数字の桁数で考えてみると分かりやすいです。1.23456と2.3を掛けると答えは、2.839488ですが、有効数字として考えてみると、小数点以下一桁までが有効と考えられます。つまり答えは2.8までしか有効ではない、ということがいえます。掛けられる数の2.3は2.30000ではないのです。
バランスのいい解析をするためには、構造と荷重と拘束のモデル化の粒度を合わせる必要があるのです。
さて、今回は拘束条件と荷重条件について説明しましょう。
構造解析は三位一体であることは、以前の連載で説明しました。構造解析は、構造と荷重、拘束の3つがあって初めて成り立つのです。ちょっとムリがありますが、フックの法則の各項を重ねてみると図1のようになります。
「構造」はそのまま剛性マトリクスとなります。これは分かりやすいですね。そして「荷重」もそのままチカラと重ねていいでしょう。「拘束」は「動かないこと」なので、変形量がゼロ。ということで、本来は答えとなる「変位」に当てはめるとします。
この3つがそろって初めて応力が発生します。どんなシャレたアイコンで拘束しようが、設計者に分かりやすい言葉で荷重を掛けようが、全てはマトリクスの中……ということになります。
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