NVIDIAが組み込み機器向けAIモジュールの最新モデルとなる「Jetson AGX Orin」を発表。同社の最新GPUアーキテクチャである「Ampere」を採用するなどして、前モデルの「Jetson AGX Xavier」と同じフォームファクターとピン互換性を維持しながらAI処理性能で6倍となる200TOPSを達成した。
NVIDIAは2021年11月9日(現地時間)、オンライン開催のユーザーイベント「GTC 2021 Fall」(2021年11月8〜11日)に合わせて、組み込み機器向けAI(人工知能)モジュールの最新モデルとなる「Jetson AGX Orin」を発表した。同社の最新GPUアーキテクチャである「Ampere」を採用するなどして、前モデルの「Jetson AGX Xavier」と同じフォームファクターとピン互換性を維持しながらAI処理性能で6倍となる200TOPS(1TOPSは毎秒1兆回の演算性能)を達成した。Jetson AGX Orinと開発者キットは2022年第1四半期に発売する予定だ。
Jetson AGX Orinは、組み込み機器向けのSOM(System on Module)であるにもかかわらずサーバクラスのAI性能を備えている。サーバ向けGPU「A100」などに採用された最新のAmpereアーキテクチャに基づくGPUコアとともに、Armのプロセッサコア「Cortex-A78」を12コア集積したSoCを搭載し、AI処理性能(INT8)は200TOPSに達する。メモリはLPDDR5を容量32GBで搭載し、その帯域幅は204GB/sにもなる。
GTC 2021 Fallでは、Jetson AGX Orinの発表に合わせて、医療機器向けの新しいコンピューティングプラットフォームとなる「NVIDIA Clara Holoscan」も発表している。NVIDIA Clara Holoscanは、Jetson AGX Orinと医療画像などの入出力インタフェースボードとなる「ConnectX-7」から構成されており、AI処理性能は250TOPS、データ伝送速度は740GB/sとなる。さらにオプションとしてGPUボードの「NVIDIA A6000」も追加可能で、AI処理性能を600TOPSまで拡張できる。
また、GTC 2021 Fallの基調講演において、NVIDIA 創業者兼CEOのジェンスン・フアン(Jensen Huang)氏は、Jetson AGX Orinなどを用いたエッジコンピューティングアプリケーションの開発を容易にする「NVIDIA Unified Compute Framework(UCF)」を紹介した。
フアン氏は「エッジアプリケーションは基本的にロボティクスアプリケーションと同じであり、自動運転車などと同じ要件の下で同様のタスクを実行する必要がある。これは、高速I/Oデータ処理、データ処理、信号/画像処理、AI推論、グラフィックス、ストリーミングなどの中から幾つかを組み合わせて実行する『ロボティクスパイプライン』であり、リアルタイム性が求められる。UCFはそのために開発した」と述べている。
なおUCFで開発したアプリケーションは、クラウドやデータセンター上でも利用可能で、エッジとクラウドを併用するハイブリッドなアプリケーションも容易に開発できるようになる。実際に、UCFを導入したNVIDIA Clara Holoscanは、医療機器メーカーに対してAIを活用したアプリケーションの開発を促進できるとしている。
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