トポロジー最適化によって導出した構造は複雑であり、CFRPの立体的な積層が前提となる。また、“製造の自動化”も欠かせない。CFRPは、現在は航空機の主要強度を受け持つ部材である1次構造材にも使われているが、製造は人手による工程が多い。そのため、海外では特に自動化装置の開発が進んでいる。
一般的な幅30cmのシートを積層していく方法では、複雑な形状を作ることはできない。自動積層法の1つであるAFP(Automated Fiber Placement)法の装置であれば、ロボットアームによって最小で幅6mmのプリプレグのシートをさまざまな方向で積層することができる(図6左)。
AFP装置では、10mm程度までしか積層できないが、現在試験中のArevo(アレボ)の3Dプリンタだと30〜40mm、またはそれ以上の高さについても製造することが可能だという(図6右)。現在、3Dプリンタメーカーと協力して、設計や加工データの作成、製造を繰り返しながら、バイオニックエアフレームの実現に向けて研究を進めている。
さらに、JAXAではBWBの前に実現すると想定されている、図7のような航空機形状の研究も行っている。胴体の幅が広く、T&WとBWBの中間の形といえる。主翼にあったエンジンを胴体の上方に配置することで空力性能を上げ、燃費削減を狙う。また、胴体とU字型の尾翼によって、エンジンの騒音を遮ることができる。「まずは、マンボウの参考になる部分を使おうと考えていますが、より適切な生物を参考にする可能性もあります」(有薗氏)。
星氏は「バイオミメティクスの適用によって、非常に有望な形ができたと考えています」と語る。今は基礎研究の段階だが、バイオミメティクスを応用した構造設計の研究は、BWBの課題を解決する大きなヒントになるだろう。2050年代には、BWB型旅客機の商用化が実現すると予測されている。その機体には、JAXAの研究成果が生かされているに違いない。
次回【後編】では、航空機の飛行状態にあわせて滑らかに形状を変えるモーフィング翼の研究について紹介する。 (後編へ続く)
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