NIMSがハリセンボンの表皮から着想を得た新しい超撥水材料を開発したと発表。従来の超撥水材料は、摩耗や変形によって超撥水性を喪失することが課題だったが新材料はこれらを克服した。シリコーンや酸化亜鉛、酢酸エチルといった市販品を用いて製造できることから実用化に向けたコスト面の課題も小さいという。
NIMS(物質・材料研究機構)は2019年9月10日、ハリセンボンの表皮から着想を得た新しい超撥水材料を開発したと発表した。従来の超撥水材料は、摩耗や変形によって超撥水性を喪失することが課題だったが新材料はこれらを克服した。また、シリコーンや酸化亜鉛、酢酸エチルといった市販品を用いて製造できることから実用化に向けたコスト面の課題も小さいとする。現在、船舶向け塗料メーカーとの共同研究を進めており、早ければ2021年ごろに実用化できる可能性がある。
超撥水材料とは、その名の通り撥水性が極めて高い材料のことである。具体的には、材料平面に接触した水滴の接触角が150度以上になる場合に超撥水材料と呼ばれる。
水滴が付着すると、金属材料のさび、航空材料の凍結、窓ガラスの曇り。外壁の汚れなどさまざまな問題が引き起こされる。超撥水材料は、水が付着しない、水を寄せ付けないので、これらの問題の解決に役立つとして熱望されている。
実は既に、生物の微細構造や機能をエンジニアリングに応用する「バイオミメティクス」によって超撥水材料は開発されている。例えば、蓮の葉やセミや蝶の羽などは、表面にμm〜nmレベルの微細な凹凸があり、これらの凹凸の間に空気が入り込むことによって超撥水性を実現している。実際に、そういった微細な凹凸を材料の表面に形成した超撥水材料も商品化されている。
NIMS 統合型材料開発・情報基盤部門 データ駆動型高分子設計グループ グループリーダーの内藤昌信氏は「こういったバイオミメティクスに基づく超撥水材料の開発はここ20年近く続けられてきた。しかし大きな課題となっていたのが、微細な凹凸が脆くて耐久性に乏しいことだ。だからこそ、丈夫でしなやかな超撥水材料が熱望されている」と語る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.