今回開発した超撥水材料は、先述した水滴の付着によって問題が発生するような用途への実用化が検討されている。また、水滴の付着を嫌う新たな用途として、ミリ波を使うために水の影響が大きくなるとみられる5Gの基地局アンテナや、内視鏡の曇り防止なども候補になっている。
これら以外に、超撥水性材料が持つ他の機能を生かした用途に向けた研究開発が進んでいる。超撥水性を持つ材料表面は、空気中では水をはじくが、水中では表面に空気の薄い層(プラストロン)を形成することが知られている。
船舶の底部に、新開発の超撥水性材料を用いた塗料をコーティングすればプラストロンが形成される。このプラストロンは流体抵抗を低減する効果があるため、船舶の燃費を向上し、CO2排出量の低減につなげられる。実際に、船底に空気の泡を送り込むことでCO2排出量を低減する実証実験が行われているが、これに超撥水性材料を用いた船底塗料によるプラストロン形成を加味すれば、さらなるCO2排出量の低減が期待できる。
実はこのプラストロン、コスタリカに生息するアノールトカゲの一種が、敵から襲われるときに水中に逃げ込む際の空気ボンベとして使われていることが知られている。内藤氏は「今回の超撥水材料の開発は、プラストロンの形成による船舶のCO2排出量低減を目的としていた。そのためのバイオミメティクスとして、ペンギンなどさまざま水生生物の観察を水族館で続けている中で、ハリセンボンに着目するに至った」と述べている。
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