生物の微細構造や機能をエンジニアリングに応用する「バイオミメティクス」。1930年ごろから利用されている開発手法であり、1980年代以降に研究が停滞した時期もあったが、ナノテクノロジーの発展によって再度注目を集めている。
2015年1月28〜30日に東京ビッグサイトで「第14回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」が開催された。同年1月30日のメインシアタープレゼンテーションでは、千歳科学技術大学 教授の下村政嗣氏が「ナノテクノロジーとビッグデータが支えるバイオミメティクス」をテーマに講演を行った。生物の機能や微細構造をエンジニアリングに応用する「バイオミメティクス」は、持続可能な社会の実現や新たな技術イノベーションに貢献する可能性を秘めており、国際標準化に向けた取り組みも進んでいるという。
生物などが持つ機能をモノづくりに活用するバイオミメティクス。下村氏は近年のバイオミメティクスの活用事例として、ドイツの航空会社であるLufthansa(ルフトハンザ)が、航空機の機体表面に水の抵抗を抑えるサメの皮膚の形状を応用して空気抵抗を低減させ、燃料消費量を改善する取り組みを行っている事例を紹介した。
その他に下村氏は、過去の2000年代に開催された複数の国際オリンピックで、英国のSpeed社がサメ肌を参考に開発した水着「レーザー・レーサー」を着用した選手が好タイムを記録して話題となったことや、Daimler(ダイムラー)がハコフグの骨格形状を模倣したコンセプトカー「Mercedez-Benz Bionic」を発表した例を紹介。バイオミメティクスはこうした事例の他にも、家電やロボットなどさまざまな領域で活用されているという。
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