京都大学iPS細胞研究所は、PDMS製マイクロ流体デバイスに対する薬物収着が薬物の分配係数と相関すること、同デバイスで培養した肝細胞が従来法で培養したヒト肝細胞と同程度の機能を有することを明らかにした。
京都大学iPS細胞研究所は2021年7月27日、ポリジメチルシロキサン(PDMS)製のマイクロ流体デバイスに対する薬物収着が、薬物の分配係数と相関関係にあることを明らかにしたと発表した。PDMS製マイクロ流体デバイスで培養した肝細胞は、従来法で培養したヒト肝細胞と同程度の機能を有することも確認した。
マイクロ流体デバイスの素材として使用されるPDMSは、水に溶けにくい性質を持つため、低分子化合物を収着しやすい。今回の研究では、肝機能評価に使用される低分子化合物のPDMSへの収着率を評価した。
まず、PDMS製デバイスとポリスチレン製マルチウェルプレート(PSプレート)でヒト肝細胞を培養した。どちらもアルブミンやHNF4αなどの肝マーカーを高発現しており、肝細胞として同程度の機能を有していることが分かった。
次に、肝臓における薬物代謝酵素活性やトランスポーター活性の評価に使用される低分子化合物12種類のPDMS製デバイスへの収着を評価。収着率は、それぞれ大きく異なっていた。
また、低分子化合物の収着率と化合物の物理化学的特性との相関を調べると、分配係数S+logD値と相関が高いことが分かった。つまり、S+logD値を調べることで、その低分子化合物がPDMS製デバイスに収着しやすいかを事前に予測できることが示唆された。
さらに、PDMS製デバイスで培養したヒト肝細胞について、低分子化合物を用いた薬物代謝酵素活性の評価ができるかを確認した。その結果、同評価を行う際は、低分子化合物の収着率を加味して解析する必要があることが示された。
PDMS製デバイスで培養したヒト肝細胞については、組み換えタンパク質に対する細胞応答の評価でも、PS製プレートで培養した肝細胞同様に評価可能であることが確認できた。
これらの成果により、PDMS製デバイスによる肝臓チップを使用した、肝疾患研究や創薬研究につながることが期待される。
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