一見すると、ズレ対策はこれで十分な気もしますが、樹脂が収縮することを考慮すると、もう一段階対策をすべきです。何度も繰り返し説明していますが、樹脂は収縮します。その収縮が原因で、1段階目の対策を施しても微妙なズレや変形を完全に解消することは困難です(図4)。
そこで、あえてこの合わせ部分に“隙間”を設けます(図5)。この隙間を設けることで、微妙なズレや変形を吸収してしまうのです。
以上のようなズレ対策(樹脂部品の合わせ対策)を製品設計にしっかりと織り込むことで、金型の修正リスクを最小限に抑えられます。
ただし、ズレ対策をしていない断面は非常に単純ですので、金型の加工工数もその分少なくなります。もし、今回のケース(相談内容の形状)が何か別の製品の内部に組み付けられる部品で、特に外観を気にする必要がないのであれば、金型コストを優先し、あえてズレが生じる形状で設計を完結するのもありだといえます(図6)。
今回のようなズレ対策はあくまでも1つの手段ですので、設計者は製品の使われ方やその状況などに応じて、その都度、最適な設計方法を選択すべきです。 (次回へ続く)
落合 孝明(おちあい たかあき)
1973年生まれ。2010年に株式会社モールドテック代表取締役に就任(2代目)。現在、本業の樹脂およびダイカスト金型設計を軸に、中小企業の連携による業務の拡大を模索中。「全日本製造業コマ大戦」の行司も務める。また、東日本大震災をうけ、製造業的復興支援プロジェクトを発足。「製造業だからできる支援」を微力ながら行っている。
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