浜松ホトニクスは、LD励起では世界最高になるという、250Jのパルスエネルギーを出力する産業用パルスレーザー装置を開発した。従来の産業用パルスレーザー装置と同程度のサイズで、2倍以上のエネルギー増幅能力を備える。
浜松ホトニクスは2021年6月28日、250J(ジュール)のパルスエネルギーを出力する産業用パルスレーザー装置を開発したと発表した。従来の装置と同程度のサイズで2倍以上のエネルギー増幅能力を備え、LD(半導体レーザー)励起では世界最高出力になるという。
加工用レーザーには、一定の強さのレーザー光を連続して出力するCW(Continuous Wave)レーザーと、レーザー光を短い間隔で繰り返し出力するパルスレーザーがある。現在、レーザー加工の主流はCWレーザーで、パルスレーザーは利用はあるものの高出力の装置が開発されず、応用開拓が進んでいなかった。
同社は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」プロジェクトにおいて、高出力パルスレーザー装置の開発を進めてきた。今回、パルスエネルギーを250Jとした産業用パルスレーザー装置の開発に成功した。
レーザー媒質として最適化したセラミックス10枚を搭載し、光エネルギーの蓄積能力を従来の約2倍に高めた。増幅器は新たに開発した小型のLDモジュール8台を搭載し、レーザー媒質を励起する効率を上げ、励起能力も従来比2倍に向上している。
同社独自の高出力レーザー技術を採用し、装置全体の光学設計を最適化。集光性や照射面への出力分布の均一性など、ビームを高品質化している。また、同装置を用いて、1kJ級レーザーの設計に必要な基本的な条件の評価も実施。現在の性能を維持したままビームのサイズを4倍に拡大することで、1kJ級レーザーを実現できる可能性を確認した。
今後、東京大学が中心となったTACMIコンソーシアムと連携し、同装置を用いたレーザー加工実験と加工データを集約したデータベースの構築、AI(人工知能)を用いた加工条件の最適化を進める。さらに同社では、1kJの産業用パルスレーザー装置の開発に向けた研究に取り組んでいく。
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