将来の水素社会に備え、吸収式冷温水機が後付けで水素/都市ガス混焼可能にイノベーションのレシピ(1/2 ページ)

パナソニック 空質空調社、大阪ガスおよび大阪ガスの100%子会社であるDaigasエナジーが、共同開発した水素および都市ガス混焼対応の吸収式冷温水機について説明した。

» 2025年08月13日 07時30分 公開
[長沢正博MONOist]

 パナソニック 空質空調社、大阪ガスおよび大阪ガスの100%子会社であるDaigasエナジーは2025年8月7日、オンラインで記者会見を開き、同日発表した水素および都市ガス混焼対応の吸収式冷温水機について説明した。

“打ち水効果”冷やし、暖めるノンフロンの吸収式冷温水機

吸収式冷温水機 吸収式冷温水機 出所:パナソニック 空質空調社

 業務用空調機は各部屋で空調コントロールを行う個別空調と、建物全体の空調を集中的に制御する大規模空間向けのセントラル空調の2つに分類される。パナソニックでは大規模施設/空間のセントラル空調向けに、吸収式冷温水機を1971年から50年以上販売している。

 吸収式冷温水機の仕組みは、“打ち水効果”だ。

 水が蒸発する際に周囲から熱を奪う特性を利用して、冷水を生成する。打ち水効果を連続的に発揮させるため、水が蒸発した際に発生する水蒸気を連続的に取り除く必要がある。その役割を担っているのが、水蒸気を吸収する特性を有する臭化リチウムを主成分とする吸収液となる。そのため、吸収式冷温水域と呼ばれている。吸収液は濃度が濃いほど吸収力を発揮するが、徐々に薄くなり吸収力が弱くなる。そこで、元の濃度に戻すために加熱、濃縮する必要があり、この熱源として各種燃料の燃焼熱や排熱を活用できる。

 吸収式冷温水機はガスや油などを熱源として利用するため、電気を熱源とする空調機に比べて消費電力を抑えられる他、ガス、油、蒸気、太陽熱に加えて、排熱も有効利用できるなど、多彩な熱源に対応する。パナソニック 空質空調社 CAC事業部 吸収式開発部 部長の田村朋一郎氏は「循環する冷媒に水を使用しているため、ノンフロンという観点からも環境性に優れた空調機だ」と語る。

吸収式冷温水機の仕組み 吸収式冷温水機の仕組み[クリックで拡大]出所:パナソニック 空質空調社

多様な将来シナリオに備えが必要、既存機も後付けで対応可能

 各国政府では、野心的な気候変動対策が打ち出されているが、それらの実現には、さらなるイノベーションが不可欠だ。資源エネルギー庁の「2040年度のエネルギー需給の見通し」では、「単一の前提ありきではなく、さまざまな不確実性が存在する」ことを念頭に置き、複数シナリオを設定して分析している。

 Daigasエナジー ビジネス開発部 技術開発チーム 空調・業務用開発グループ チーフの金内健氏は「安定供給を維持した現実的なトランジション手段として、引き続き都市ガスが活用されていくものと認識しているが、将来に備えて、水素などを利用可能な機器ソリューションの準備が必要だ」と話す。

 今回、共同で開発した吸収式冷温水機は、水素または都市ガスのみの運転から、水素と都市ガスの混合燃料で利用が可能だ。また、燃焼制御盤や燃焼制御ユニット、バーナーの交換によって既存機でも後付けで対応できるという。「今後、都市ガスを使用しつつ、水素燃料の活用を検討しているユーザーも安心して吸収式冷温水機をお使いいただける」(田村氏)。

共同開発した水素および都市ガス混焼対応の吸収式冷温水機システム構成 共同開発した水素および都市ガス混焼対応の吸収式冷温水機システム構成[クリックで拡大]出所:パナソニック 空質空調社
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