ABBは「IIFES 2025」において、協働ロボット「GoFa」による実験室の全自動化を実演公開した。軌跡精度0.03mmを実現する新機能や高精度シミュレーション技術により、精密領域への対応拡大を狙う。
ABBは、「IIFES 2025」(2025年11月19〜21日、東京ビッグサイト)において、協働ロボット「GoFa CRB 15000(以下、GoFa 5)」を展示し、実験室(ラボ)に見立てた空間でロボットが全自動で実験をサポートする様子を披露した。
GoFa 5は、2021年2月に発売された6軸のアーム型協働ロボットだ。本体重量27kg、最低設置面積約165mm2とコンパクトながら、最大可搬重量は5kg、アームのリーチ950mmで、最高で毎秒2.2mの速度で動作する。
デモンストレーションではメトラー・トレド製の精密計測器などと連携し、実験用カップを把持したGoFa 5が、計量やpH数計測、回転ラックへの設置、液体注入などの作業を自動で行うラボオートメーションの一連の流れを実演した。ABBの説明員によれば、「ラボでの人手作業は、誤差の発生や反復作業の手間が課題であり、ロボットに置き換えたい需要がある。一方で、人が一緒に働く空間でもあるため、精密性と安全性の両面が求められる」という。
安全性については、GoFa 5は6つの関節全てにトルクセンサーを搭載しており、人や物がわずかに接触しただけで瞬時に停止する機能を備える。人が不在の時は高速で動作し、接近時は安全速度へ減速するという運用も可能だ。防水/防塵(ぼうじん)性能はIP54としている。
操作プログラムはリードスループログラミング(ダイレクトティーチング)を採用。ロボットに関する予備知識がないユーザーでも、アームを直接動かして教示したり、操作ペンダント上のブロックをドラッグ&ドロップしたりするだけで直感的にプログラムを作成することができる。
2024年9月には、GoFa向けの新機能「Ultra Accuracy」を発表した。これは絶対位置精度0.1mm、軌跡精度0.03mmを実現するオプションで、この機能により電子機器の接着塗布、自動車部品のレーザー溶接、計測用途での精密品質検査など、従来の協働ロボットでは困難であった高精度領域への適用もできるようになった。
GoFaはアームに装着するハンドを把持タイプや吸着タイプなどに変更することが可能で、複数台を同時に連携させて稼働できるため、ピッキングの用途の他ねじ工具メーカーなどにも導入されている。2023年6月には可搬重量を10kgおよび12kgに増加させた「GoFa 10」「GoFa 12」の2タイプを追加。これらは防水/防塵性能をIP67に強化したことで、マシンテンディング(機械への材料供給など)や溶接などより過酷な現場でも稼働できるモデルとしている。
ABBは協働ロボットのさらなる強化に加え、ソフトウェア開発にも注力していくと語る。同社の「RobotStudio」は、GoFaシリーズなどさまざまな機種に対応するシミュレーションおよびオフラインティーチング用ソフトウェアで、RobotStudio上でのシミュレーションは、「実機との動作一致率が99%を超える」(ABBの説明員)としており、導入企業側の検証制度向上や改良の手間解消に寄与したい考えだ。
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