従来、パナソニック 空質空調社では燃焼反応を解析し、火炎温度を見える化することで、NOx(窒素酸化物)発生原因となる高温箇所を推定。高温箇所の温度を低減させるバーナー設計によって低NOxを実現してきた。ただ、水素は都市ガスと比較して燃焼速度が6倍となり、同じバーナーで燃焼すると火炎温度が局所的に高温化し、NOxが2倍以上発生した。
「われわれは解析技術を活用し、水質、燃焼時の高温箇所、すなわちNOx発生箇所を特定し、その部分に燃焼後の排ガスを供給することで、あえて燃焼をしにくくさせ、燃焼速度を低下、火炎温度を低減することでNOxを都市ガス同等まで抑制させることに成功した」(田村氏)
燃焼制御に関しては、Daigasエナジーが持つ、デジタル燃焼制御システム「Dr.Flame」を活用した。都市ガスと水素では燃焼した際の発熱量が異なり、その混焼率や使用する冷暖房の出力によっても、燃焼に必要な空気の量が変わる。「水素、都市、そして空気の量を最適に調整するため、精密にコントロールする必要があった」(金内氏)。そこで、それぞれのポイントごとに理想的な空気比を決定し、それをバーナーに供給することで、全混焼率、冷暖房出力において安定燃焼、低NOxを実現した。
社内の実証実験では、水素100%:都市ガス0%の割合から25%ずつ都市ガスの割合を増やして水素0%:都市ガス100%まで変化させたが、いずれの混焼率でも低NOxを維持した他、COP(消費電力1kWあたりの冷暖房能力)においても満足のいく結果になったという。技術検証は完了しており、今後はユーザーの要望も聞きながら、実用化に向けて検討を進めていく。
水素の製造や貯蔵、輸送など水素供給網の構築は今後の課題だが、田村氏は「われわれの吸収式冷温水機は30年以上お使いいただける製品だ。今、購入した製品は2050年になっても使い続けられる。将来は、今と状況が変わっている可能性が高いと悩むユーザーに対しても、われわれの商品なら水素社会が来ても本体をそのまま使用できるという提案が可能だ」と述べる。
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