スマート工場化が進む中、工場内の生産機械や設備にも生産情報や設備情報などを活用するために「つながる」ことが求められるようになってきている。こうした環境に合わせる形で、生産機械についても協調領域については「水平分業型」へのシフトが加速する見込みである。
スマート工場化が進む中、工場内の生産機械や設備にも生産情報や設備情報などを活用するために「つながる」ことが求められるようになってきている。こうした環境に合わせる形で、生産機械についてもこうした変化に合わせ標準化やオープン化の動きが加速している。従来は「垂直統合型」をベースとしたメーカーなどが多かったが、2021年は協調領域と競争領域の選別が進み、協調領域については「水平分業型」へのシフトが加速する見込みである。
インダストリー4.0などスマート工場化が進む中で、工場の中で使用する産業機械にもITやデジタル技術を採用する動きが加速している。スマート工場化のカギは生産現場から生まれる「データ」にあるが、「データ活用」を進める中で、生産機械についても「データ取得を前提とした機能」を用意する必要性が高まってきている。
しかし、こうしたデジタル技術を機械メーカーが独自で作ろうとしても難しい。特にIoT(モノのインターネット)に関連する技術は機械技術からエンタープライズIT、そして製造現場独自のITなど幅広い技術に対する知見が必要となる。こうした広範な技術を1社でカバーするのはほぼ不可能であるため、他社との協力が必要となる。
ここ数年はこうした課題を解決するために、機械メーカーとITベンダー間の協業が数多く発表されている。例えば、ファナックはIoTプラットフォーム「FIELD system」を、シスコシステムズ、ロックウェルオートメーション、Preferred Networks、NTTグループ3社などとの協力で推進している他、2020年11月製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)用のクラウドサービスを提供する新会社「DUCNET(ディーユーシーネット)」を設立している。
DMG森精機は、日本マイクロソフトとの協業を強化している。同社の工作機械のインテリジェントな制御盤として展開する「CELOS」はマイクロソフトの技術を基盤に構築されている。これらに向けたソフトウェアソリューションとして「CELOS Club」なども展開しているが、こちらも従来の社内サーバからマイクロソフトのクラウド基盤「Microsoft Azure」に移行するとしている。
ヤマザキマザックは、2019年4月から開始した同社のコネクテッドサービス「Mazak iCONNECT」について基盤となるクラウドプラットフォームの構築で、シスコシステムズとの協業を生かしたとしている。ヤマザキマザックとシスコシステムズは工場内でつながる環境構築を進めるための工場用のネットワークスイッチ「MAZAK SMARTBOX」も協業により開発している。
また、これらの動きの中で、自社の強みとし内製によりブラックボックスとしての強みを維持する「競争領域」と、他社との協業により開発負荷を低減する方向に進む「協調領域」の切り分けが進んだことにより、IT以外の領域でもオープン化の方向性が強まっている。
例えば、デンソーウェーブは2019年12月に新たなロボットコントローラー「RC9」を発表し、ベッコフオートメーションの産業用PCおよびPCベース制御技術である「TwinCAT」をロボットコントローラーの1つの技術基盤として同社の製品に組み込んでいく方針を示している。これらのオープンな産業用PCを基盤とすることで、性能に応じたハードウェアの選択が可能となる他、複数台のロボットの統合制御や一元管理が可能となる。
デンソーウェーブ FA・ロボット事業部 製品企画室 室長の澤田洋祐氏は「ロボットメーカーとしての競争領域は『確保されたリアルタイム性の上で、ロボットをどのように動かすか』『どのように精度や速度を高めていくのか』『用途をどのように開拓していくのか』など数多く存在する。今回の協業により、こうした差別化領域にリソースを集中させることができる」と協業についての考えを述べていた。
工場環境が大きく変化し、スマート化に向けて搭載対象の技術が広がる中で、機械についてのモノづくりそのものも大きく変わっている。そういう意味では、差別化につながらない「協調領域」については、オープン化や標準化、モジュール化などを進め、開発負荷を下げていくことが必須である。そして、差別化のポイントだと考える「競争領域」にリソースを集中することが求められているといえる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.