MONOistは2020年12月16〜17日、オンラインでセミナー「サプライチェーンの革新〜Withコロナ時代に必要不可欠なサプライチェーンのデジタル化〜」を開催した。後編では特別講演として登壇したクニエ シニアマネージャーの宍戸徹哉氏と同マネージングディレクターの笹川亮平氏による「日本企業が陥りがちなサプライチェーンマネジメントのデジタル化阻害要因」を含むDay2の内容をダイジェストでお伝えする。
MONOistは2020年12月16〜17日、オンラインでセミナー「サプライチェーンの革新〜Withコロナ時代に必要不可欠なサプライチェーンのデジタル化〜」を開催した。前編ではコニカミノルタ SCM部 部長の神田烈氏が登壇した基調講演を含むDay1の様子をお伝えしたが、後編では特別講演として登壇したクニエ シニアマネージャーの宍戸徹哉氏と同マネージングディレクターの笹川亮平氏による「日本企業が陥りがちなサプライチェーンマネジメントのデジタル化阻害要因」を含むDay2の内容をダイジェストでお伝えする。
クニエは、NTTデータのグループ会社として、主に製造業を中心にコンサルティングサービスをグローバル展開している。現状調査からSCM(サプライチェーンマネジメント)やS&OP(セールス&オペレーションプランニング)の基本知識トレーニング、構想策定、業務設計、IT導入支援、定着化支援までを一気通貫で提供しており、SCMに関する全域での幅広い知見を持つことが特徴だ。MONOistでも2020年6〜11月にかけて「製造業DXの鍵−デジタルサプライチェーン推進の勘所」という掲載しており、講演では連載の内容なども踏まえつつさまざまなポイントを紹介した。
コロナ禍で不確実性が高まる中、製造業のサプライチェーンにおいても「不確実性はレベル4(全く読めない状況)となっている。VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代に入ったといえるだろう。こうした中で企業にとってはこれらのつかみどころのない状況をいかに合理的に判断し乗り越えていくかが重要なポイントになってきている」と笹川氏は語る。
サプライチェーンを管理するSCMは2000年頃から1つのトレンドとなっていたが、当時は在庫削減など効率性をテーマにしていた。こうした時代をSCM1.0とすると、そこから、さまざまな需要の変動に追従していくためのスピードやシミュレーションなどの柔軟性を求めるSCM2.0へと進んだ。さらに長期的な意思決定などを交えた採算性を目指したSCM3.0へと進み、今はモノ売りだけではなくサービス、顧客価値起点などを含めた多様性に対応するSCM4.0の時代へと入っている。
しかし、日本企業のSCMの状況は、多くの場合が1.0の段階で止まっている。特に、SCMプロセスの中に手作業でのExcel入力や集計などが残されており「バージョン管理の問題で最新情報が分からない」や「入力タイミングによりタイムラグが大きくなる」「バケツリレーによりミスが頻発する」などさまざまな問題が生まれている。「データが属人化され、全体として共有や再利用ができない問題も大きい」と笹川氏は指摘する。
SCMに関するプロセスについても多くの企業においてデジタル化は進められているが、取り組み領域は主に販売面で予測精度を上げることなどに主眼が置かれている。一方で、SCMの具体的なオペレーションや業務を支えるシステム、具体的なKPIなどの領域は軽視されており、この結果が情報をつなぐプロセスが未整備になっている要因だとする。「そのため、属人的な判断や人を通じた連携任せになっていると推測できる。これらがSCMのデジタル化の推進を妨げる原因だと見ている。人を基軸とした改善活動だけで成功してきた過去の成功体験の呪縛がオペレーションに対する投資を遅らせ、属人化を促進し、人海戦術で対応する負のループに陥っている」(笹川氏)。
これらを打開するためには、表層ではなく根本的な手を打つことが重要となる。これまでは販売、生産、物流、調達など個別領域の効率化が主に行われてきた。ただ、これら個々の効率化だけでは抜本的な対策は打てない。サプライチェーン全体を一貫してつなぎ、それを意思決定に利用していく必要がある。
サプライチェーンのDX(デジタルトランスフォーメーション)は「サプライチェーンのメカニズムを理解しつつ、それをモデル化したうえで、しっかりと業務領域をつないでいく形でアプローチしなければ、本質的に意思決定につなげていくことは難しい。また、SCM自体が広い領域にわたるため、さまざま組織の人とかかわりながらプロジェクトを進めることになる。そのため、DXを進める人の改革を行うことも必要となる」と宍戸氏はSCM改革の進め方について考えを述べている。
続いての講演では「待ったなし!サプライチェーンのデジタル変革〜可視化、自律化による不確実性への対応」をテーマにBlue Yonderジャパン執行役員ソリューションコンサルティングディレクターの白鳥直樹氏が、柔軟で回復力の高いサプライチェーン構築のポイントを紹介した。
Blue Yonderは米国に本社を置くサプライチェーンに特化したソフトウェアベンダーである。製造、流通、物流業の大手企業向けにAIや機械学習を活用したデジタル・フルフィルメント・ソリューションを提供している。
同社が目指すサプライチェーン自律化への段階的アプローチには可視化(レベル1)、予測分析(レベル2)、処方的サプライチェーン(レベル3)、自己学習型サプライチェーン(サプライチェーンの自動運転化、レベル4)の4つの段階があり、現在の日本企業はレベル1と2の間にあるところが多いと指摘する。また、レベル4について、白鳥氏は「コストの閾値を超えない範囲の対策については機械が自動的に判断し、実行指示を出す。閾値を超える場合は機械が人間に判断をあおぐ。その結果を受けて意思決定をする世界を描いている」という。
同社ではこれらレベル1〜4の業務プロセスを支えるための「Luminateプラットフォーム」を用意。この中で、データマネジメント、AI・機械学習などのサービスをコアの技術を提供し、その上に計画系、物流向け、流通系ソリューションおよびアプリケーションを展開する。アプリケーションはプランニング、コマース、ロジスティクスの各要素から構成されている。また、ソリューションの代表格となるのが「Luminateコントロールタワー」で、サプライチェーン全体をリアルタイムに可視化でき、高度分析を活用した対応策を提示するなどの特徴を持つ。この他、新型コロナウイルスがもたらすサプライチェーンへの混乱への対応として「COVID-19サプライチェーン・リスク・リスポンス」というコントロールタワーの機能も提供している。
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