MONOistは2020年12月16〜17日、オンラインでセミナー「サプライチェーンの革新〜Withコロナ時代に必要不可欠なサプライチェーンのデジタル化〜」を開催した。本稿では、前編で、コニカミノルタ SCM部 部長の神田烈氏が登壇した基調講演「サプライチェーンをDX〜コニカミノルタが実践するデジタル変革〜」を含むDay1の内容をダイジェストで紹介する。
MONOistは2020年12月16〜17日、オンラインでセミナー「サプライチェーンの革新〜Withコロナ時代に必要不可欠なサプライチェーンのデジタル化〜」を開催した。本稿では、前編で、コニカミノルタ SCM部 部長の神田烈氏が登壇した基調講演「サプライチェーンをDX〜コニカミノルタが実践するデジタル変革〜」を含むDay1の内容をダイジェストで紹介する。
製造業にとって、「必要なものを必要な時に必要なだけ必要なところへ供給する」というSCM(サプライチェーンマネジメント)は以前から重要視されてきたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)でモノや人の移動が制限される中で、あらためてその重要性がクローズアップされている。同時に、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)など先進デジタル技術の活用し、SCMの高度化を実現できる段階に入ってきている。
これらの背景からコニカミノルタでは、複合機(MFP)のオプション品の需要予測にAIを活用するなど、サプライチェーンオペレーションのデジタル変革に取り組んでいる。
「SCM」は製造業各社にとって捉える範囲が異なっている場合が多いが、コニカミノルタの場合は「起点となる需要予測」「その需要予測に基づいた需給調整」「受発注出荷」「グローバル物流」「S&OPプロセスの推進」「SCMシステム管理」「SCM戦略企画」「KPI管理」の8つの役割を担う。コニカミノルタのSCM部の大きな特徴として、日本人スタッフだけでこれらを行っているのではないということがある。早期からこれらの業務を香港事務所とシェアしており、総勢約100人がこれらの業務に携わっている。
コニカミノルタのSCM部の特徴として事業や地域などの範囲が非常に広いということが挙げられる。コニカミノルタには、MFP(複合機)やプリンタなどを扱うオフィス事業、デジタル印刷のニーズに対応した出力ソリューションを提供するプロフェッショナルプリント事業、超音波やレントゲン、バイオヘルスケアなどの医療のデジタル化を支援するヘルスケア事業、産業用レンズなど光学技術と材料技術を生かした産業用材料・機器事業など、多数の事業がある。その中でSCM部が対象としているのが、オフィス業、プロフェッショナルプリント事業、ヘルスケア事業の3つの事業部門となる。対象品目は、機器本体やオプション品、消耗品などを含めると約6000品目になるという。
地域として見ても、世界各地に生産拠点や販売拠点が点在しているため、日本、北米、欧州、中国、アジアなどの各地域との情報のやりとりを進めながら、安定したサプライチェーンの確保に取り組んでいる。ERPシステムにより毎日、各現場の情報を吸い上げて共有している。この内、生産サイクルは週次でアップデートし、需要予測は月次で対応していた。
ただ、コロナ禍により需給が急速に増減する中でこのサイクルでは対応の難しい場面が出てきた。神田氏は「需要のトレンドが急速に変化する中で、最適なサプライチェーンを維持するためには、サイクルを早める必要があった。現在は需要予測も週次でアップデートしている」と述べている。
コロナ禍により、供給が滞る場合も多くなり、部品や製品の在庫も大きくなりがちだが「キャッシュフローの重要性を考えるとコロナ禍においても末端で在庫を作らないということは重要だ。その一方で『顧客に迷惑を掛けない』『欠品を起さない』を両立させていくことを目指す」(神田氏)。
これらの取り組みを進めてきたコニカミノルタだが、さらにデジタル技術を活用した変革に取り組んでいる。同社のSCMにおけるDXの目的は主に以下の3つである。
また、デジタル化された業務に慣れていることからSCMオペレーションを実行するスタッフ全員がDX実践の推進役になることを目指した。グローバルサプライチェーン化が進むと経済基盤が弱い地域での生産も増えるために必然的にサプライチェーンの問題も多くなる。現在で見ても、COVID-19の他、米中貿易摩擦など世界の環境変化によりサプライチェーンが大きく揺さぶられる環境が続いており、ストレスがかかる状況が続いている。この中でデジタル技術の活用を深め「全員参加で改革を進めてピンチをチャンスに変えられるようにしたい」と神田氏は語っている。
これらの取り組みの一環として、以前から取り組んできたAI活用もさらに強化を進めている。コニカミノルタでは以前から、複合機のオプション製品の需要予測にAIを活用し予測精度を高める取り組みを3年かけて進めているが、オペレーションに組み込める形になってきたという。「的確に業務に活用できることを確かめ、ステークホルダーとの合意も得るなど慎重に進めた」(神田氏)。
ライブテストでは、AI技術の評価と業務適用性を確認。テストの結果では、予測については目標を上回る精度(約8%向上)を得たとしている。現在は欧州地域で複合機のオプション品に限定して導入しているが、今後はAIを活用した需要予測を日本、北米、中国、アジアパシフィック地域に広げていく計画だ。さらに「品種も全ての製品種に拡大していく」(神田氏)としている。
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