2020年の3Dプリンティング事業の取り組みとしては、やはりCOVID-19への対応が挙げられる。HPと同社パートナーが連携し、感染症対策部品の設計製造に取り組み、世界各国で量産。国内を含め、30社以上のパートナーとともに、累計400万以上の部品を製造した。3Dプリンタの特色を最大限に生かし、生産リードタイムを大幅に削減して、医療現場へ迅速に部品を供給することができたという。「ここでの重要なポイントは、400万点以上もの部品を、デジタルマニュファクチャリングならではのサプライチェーンで提供できたことだ」(秋山氏)。
そして、この一連の取り組みが製造業に認知され、これまで設計製造ツールの1つとして考えられてきた3Dプリンティングの位置付けが変化し、自分たちのモノづくりにどのように適用すべきかを検討する機会を生み出しているという。秋山氏は「従来のような要素開発としての利用ではなく、用途開発へのシフトが進んでいる。3Dプリンタを自分たちのモノづくりのどこで使えば、メリットを引き出すことができるのかを積極的に考え、新たな取り組みに挑戦している国内企業が増えている」と話す。
その裏付けとなるデータとして秋山氏は、HPが世界中の製造業のエグゼクティブ2000人以上を対象に行った調査「HP Digital Manufacturing Trend Report」の結果を抜粋して紹介した。それによると、99%の回答者が今後の成長にデジタルマニュファクチャリングが必要だと考え、90%の回答者が新たな生産/サプライチェーンモデルを調査中とし、85%の回答者が3Dプリンティングへの投資を増額する予定だとしている。
こうした市場環境を踏まえた同社の3Dプリンティング事業では、このコロナ禍において、HP Jet Fusionシリーズが製造業の中でますます重要な位置付けを占めるとみており、同シリーズを活用した「設計・デザインプロセスの革新」「サプライチェーンの革新」「ビジネスモデルの革新」を後押ししていきたい考えを示す。
また、秋山氏は最新の顧客事例として、現在開発中の金属3Dプリンタ「HP Metal Jet」を活用したゴルフパター(Cobra Golfの事例)や、フィット感を高めるループヒンジをHP Jet Fusionで実現したサングラス(サンリーブの事例)を紹介。後者は、HPの認定製造パートナーであるSOLIZE Productsが開発協力を行った事例の1つで、「3Dプリンタを活用したモノづくりにいきなりチャレンジするとなるとハードルが高いと感じることもある。HPとしては、われわれの製造パートナーとともに、顧客が取り組む新しい製品づくりへの挑戦を積極的に支援していきたい」と秋山氏は説明する。
そして、最後に国内における最新の取り組みとして、八十島プロシードと共同で進めている「HP Jet Fusion 5200」向け新材料「ポリプロピレン(PP)」の技術検証の話題にも触れた。秋山氏は「自動車、家電、医療機器などでも多く使われているPPが間もなく利用できるようになる。現在、八十島プロシードからのフィードバックを受けながら、造形パラメータの最適化などを進めている。日本の顧客にも受け入れられる材料にしていきたい」と述べる。
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