HPの金属3Dプリンティング技術で短期開発と高性能化を実現したゴルフパター3Dプリンタニュース

HPは、ゴルフクラブの製造を手掛けるCobra Golfが同社の金属3Dプリンティング技術「HP Metal Jet」を採用した限定モデルのゴルフクラブ「KING SUPERSPORT-35 パター」を販売すると発表した。

» 2020年11月24日 06時30分 公開
[八木沢篤MONOist]

 HPは2020年11月17日(現地時間)、ゴルフクラブの製造を手掛けるCobra Golfが同社の金属3Dプリンティング技術「HP Metal Jet」を採用した限定モデルのゴルフクラブ「KING SUPERSPORT-35 パター」を販売すると発表した。

 KING SUPERSPORT-35 パターは、金属3Dプリンティング技術により複雑な格子構造を内部に備えたヘッドを実現し、重量配分を最適化することで、最大限の慣性モーメントを実現するブレードタイプのパター。Cobra Golfのエンジニアと、HPおよびHPのソリューションパートナーであるParmatechのチームが約2年の歳月をかけて開発した。

HP Metal Jetテクノロジーを用いて開発されたゴルフクラブ「KING SUPERSPORT-35 パター」 HP Metal Jetテクノロジーを用いて開発されたゴルフクラブ「KING SUPERSPORT-35 パター」 ※出典:HP [クリックで拡大]

 Cobra Golfは、HP Metal Jetが従来の製造方法や他の3Dプリンティング技術と比べて優位性があると判断し、採用を決定。複雑な構造に対応でき、処理能力や開発における適応力も高く、設計からプロトタイプ作成、テストまでを素早く繰り返し行えたことで、短期間での製品開発を実現した。Cobra GolfとHPとの取り組みは2019年から始まり、約8カ月間で35パターンもの異なる設計を繰り返し検討、HP Metal Jetによって設計の自由度と製品開発における革新的なスピードをもたらしたという。

3Dプリンティング技術が生み出す次世代パター

 KING SUPERSPORT-35 パターのヘッド部はSUS316(ステンレス鋼材)を素材とし、造形後、高温で焼結して金属を結合させ、最終的なヘッド部を形成。3Dプリンティング技術により、従来の鋳造や鍛造では実現不可能な、内部に複雑な格子構造を備えたパターヘッドを実現する。そして、製造プロセスの最終段階で、パター表面をCNCマシンで精密加工し、最終仕上げを施している。

 また、パターのフェース面は、SIK Golfと提携して設計。フェース構造にSIK Golfの特許取得済み技術である「DLTテクノロジー(Descending Loft Technology)」を採用し、アルミニウム素材を組み合わせてインサートしている。DLTテクノロジーは、4種類の段階的なロフトでデザインされており、どの部分にボールがヒットしても一貫性のある安定した転がりを実現するという。

パターのフェース面はSIK Golfと提携して設計 パターのフェース面は、SIK Golfと提携して設計 ※出典:HP [クリックで拡大]

 今回の発表を受け、Cobra Golf マーケティング部門 バイスプレジデントのJose Miraflor氏は「HPの3Dプリンティング技術で実現する複雑な格子構造を利用し、パターヘッドの中心部から重量を取り除き、かなりの重量をヘッド外側へ周辺配分することができた。その結果、優れた慣性モーメントが得られ、安定性と寛容性が大幅に向上した」とコメントを寄せる。

Limited Edition KING SUPERSPORT-35 Putter ※出典:COBRA PUMA GOLF

 なお、Cobra GolfはHPとの複数年にわたる戦略的パートナシップに基づき、今後もHPの3Dプリンティング技術を生かした高いパフォーマンスとゴルファーの満足度を引き上げる魅力あるゴルフ用品の実現を目指す。今回製品化したKING SUPERSPORT-35 パターに引き続き、2021年には3Dプリンティング技術を採用した製品を2モデル追加予定だとする。

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