次に、温度に対する設計検討を行います。
架台内には、電装関連が収納されることが多くあります。これらの要素は熱を発生し、装置に電源が投入されると経時的に温度上昇が見られます。この熱源の架台への伝熱により、架台には温度分布が生まれ、熱膨張による変位が生じます。こうした事象に直面することは少なくありません。
以下に、熱源とその影響について整理してみます。
装置が設置される環境温度の変化による影響も考えなければなりませんが、今回は“架台内の熱源の影響のみ”を検証します。
架台内に熱源を設置し、その温度を50℃に設定します。架台内外の対流を考え、定常解析を行うと図8のように、約20℃の温度分布幅がある結果を得ることができました。なお、この熱伝導解析を行う際は、「梁メッシュ」を使用していません。
「固体(ソリッド)」と「梁(ビーム)」の熱伝導解析を行うには、個々の部品の面に対して、「接触セット」というソリッド要素と梁(バー/ビーム)要素の接触定義を設定する必要があります。
本当は、これまでの経緯からこの混在メッシュによる解析を行いたかったのですが、架台を構成する複数の要素の接触定義を行うのはかなり大変なので、ソリッド要素を使用して、各要素間をボンド結合とし、伝熱しやすい設定を行うことで“ワーストケース側での解析”を行いました。
最近のPCは性能も良いので、ソリッドメッシュを力任せに要素分割することも筆者の経験上少なくありません。この方法で、温度分布の影響とベース面での荷重条件を基に解析を行います。
断面性能を定義した1本の棒のようなものと考えます。架台のような筐体などにソリッドメッシュを作成する際、非常に多い要素数になったり、複雑な断面を持つ部品であったりしても、2節点で表されるため、正しく断面性能が定義できるのであれば優位性があります。断面形状、断面2次モーメント、断面係数などが重要です。梁メッシュでは、拘束条件が制限される場合があります。
架台内部の温度分布の影響により、熱源を考えなかった場合と比べて、架台上面の変位平均値0.033mm⇒0.044mmとなり33%の変化を確認できました(図9)。
ただし、この比較の場合、解析対象と下モデル構造が異なり、かつメッシュタイプも違っているため、理想的な相対比較にはなりません。そこで、同じソリッドメッシュ条件で、温度の影響を考慮しない場合の解析をやり直しました(図10)。
梁メッシュの場合と解析結果の傾向は同様で、この差異も2μm(6%)だったので、ソリッドメッシュの使用による温度影響の有無での相対的比較を行ったところ、架台上面の平均変位0.031mm⇒0.044mmとなり、42%の変化が確認できました。
しかし、変位の傾向は異なるものとなりました。熱伝導解析では、対流の設定の結果への影響もありますが、解析方法が“確からしい”とすれば、想像よりも熱伝導による膨張の影響は大きいと考えることもできます。
今回の変位を求める解析では、架台の床接地面に対して、固定ジオメトリではなく、垂直な方向以外に自由度のある設定にしました。ただし、この場合、モデルの拘束が不安定になるため、「ソフトスプリング」という設定を行いました。
モデルの拘束が不安定になることを防ぐために、このオプションを使用します。不安定な拘束状態では、剛体移動または回転が発生する場合があります。ソフトスプリングは、この剛体移動を防ぐ機能といえます。
今回は、熱伝導のみを考慮して解析を行いましたが、架台内の雰囲気を含めた検証も必要だと考えます。次回、さらに検討を行っていきましょう。お楽しみに! (次回へ続く)
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