初心者を対象に、ステップアップで「設計者CAE」の実践的なアプローチを学ぶ連載。詳細設計過程における解析事例を題材に、その解析内容と解析結果をどう判断し、設計パラメータに反映するかについて、流れに沿って解説する。第8回は、架台内の雰囲気温度の上昇による影響を検証する。
これまで構造解析による架台の強度解析と熱伝導解析を行ってきました。架台内は熱源となる電源系や制御系の電装盤によって筐体(固体)を介した熱伝導以外にも、架台内の雰囲気温度の上昇による影響を受けます。今回はその影響の検証を行います。
熱を伝える仕組みには、これまで解説してきた「熱伝導」以外に、「熱伝達」「熱放射(熱輻射)」があります。
表1にこれら3種類の熱の伝わり方の特徴をまとめました。
輻射の現象は身近にあります。太陽の日差しが暖かいのは、太陽の熱が電磁波になって地球(地表)に届き、熱に変換されることによります。輻射式ストーブや、やかんの熱を感じるのも同じです。
参考値ですが空気の熱伝導率は、常温(20℃)で0.0257[W/m K]となります。ちなみに、水の場合は常温で0.602[W/m K]なので、空気の熱伝導率は非常に小さく、熱を伝えにくいものだということが分かります。上記の他にも、対流と輻射の例として、ファンヒーターは対流によって空気を温めたもの、オイルヒーターなどは輻射によるものとイメージすると理解しやすいでしょう。
熱伝導解析(構造解析)と熱流体解析はどのように使い分けたらよいのでしょうか。ここではSOLIDWORKS製品を参考に比較します。
熱伝導の検証は、構造解析を使用した場合も表2にあるような“機能の制約”があるものの、「設計者CAE」としての十分な機能を持ちます。
解析を行う際には、「何を検証したいのか」という目的(ゴール)に合わせて、あえて機能を制限して検証を行うことも必要です。設計者が自ら行う設計者CAEにおいては、できるだけ工数をかけず、短時間で結果を得て、比較検討を行いたいという思いもあるからです。
一方、流れ(温度、圧力、速度)の検証は、熱流体解析によって可能ですが、構造解析では検証できません。熱流体解析は構造解析に比べて、設定項目や経験も必要で、計算時間を要するという特徴もあります。
業務の都合上、すぐにでも熱流体解析にチャレンジしなければならない状況もあるかと思いますが、筆者としては、まずは構造解析を使いこなした上で、熱流体解析へステップアップしていくというアプローチをオススメします。
また最近では、より設計者CAEに特化したリアルタイムシミュレーションツールも登場しています(例:アンシスの「Ansys Discovery」)。こうしたツールでは複雑な設定もなく、瞬時(ほぼリアルタイム)に解析結果が得られるため、設計へのフィードバックを効率的に行うことが可能です。設計工程の入り口の部分でシミュレーションを使用する効果は非常に高いといえるでしょう。
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