機械系CAEの国内市場規模、2024年は前年比107.4% : CAEニュース
矢野経済研究所は、国内外の「機械系CAE市場」を調査し、国内市場についての分析結果を発表した。2024年の国内市場規模は前年比107.4%となる1041億8300万円を見込んでいる。
矢野経済研究所は2025年3月13日、国内外の「機械系CAE市場」を調査し、国内市場についての分析結果を発表した。半導体の需要が順調に推移し、自動車業界もソフトウェア化やVT(Virtual Testing/シミュレーションを用いた事前検証)に関連する需要増が継続していることから、2024年の国内市場規模(事業者売上高ベース)は前年比107.4%となる1041億8300万円を見込んでいる。
2022年の機械系CAE国内市場規模は、前年比106.5%となる901億6400万円だった。日本の製造業は、ロシアのウクライナ侵攻による原材料価格高騰、インフレの加速により、半導体不足や自動車部品供給網が混乱したことに影響を大きく受けた。また、年末まで中国のゼロコロナ政策が継続されたことで、自動車の減産を余儀なくされた。
機械系CAE国内市場規模推移と予測[クリックで拡大] 出所:矢野経済研究所
2023年の機械系CAE国内市場規模は、前年比107.6%となる970億1400万円と推計。半導体の製造能力が増強され、半導体需要が幅広い業種で高まった。特に自動車の電動化対応で、車載電池などの開発、ECU(Electronic Control Unit)の統合化やSoC(System on a Chip)に関連する研究開発が進展した。また、Euro NCAP(欧州新車評価プログラム)に2026年からVTの導入が盛り込まれ、新たな需要が生まれてきている。
レポートでは、自動車業界が機械系CAEを積極的に活用している要因として、次の3点を挙げる。まず、自動車開発はソフトウェア化が進み、ソフトウェアを更新して機能や性能を高めるSoCの研究開発が世界中で進んでいる。このことが、半導体需要の伸びに寄与している。
次に、大手自動車メーカーが、ギガキャスティング(精密鋳型に溶融したアルミニウムを注入し、大型部品を一括成形する鋳造技術)の導入に動き出しているため、機械系CAEを活用した研究開発や生産現場での需要がより一層広がってきている。
3つ目は、Euro NCAPでVTを採用したことで、2026年の前面衝突、側面衝突VTを皮切りに、3年ごとに要求項目やレベルを上げる動きがある。これに伴い、衝突解析などで機械系CAEの引き合いが増えていく見通しだ。
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