MaaS(Mobility as a Service)の推進
スマートフォンアプリまたはWebサービスにより、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済などを一括で行うサービス「MaaS(Mobility as a Service)」については、国土交通省が2019年6月に、全国19地域において検証実験への支援を行った。
経済産業省は、「パイロット地域分析事業」を13地域で選定し、実証実験などへの支援を行う中で、ベストプラクティスの抽出や横断的な課題の整理を行った。また、データの円滑な連携を目的として、国土交通省では2019年9月より有識者で構成される検討会を開催し、2020年3月に「MaaS関連データの連携に関するガイドライン」を策定した(図31、図32、図33)。
高齢者の外出を促すためには、高齢者の移動手段の確保を行うだけでなく、高齢者が気兼ねなく外出できる環境を整備することも重要であることから、2020年に改めてバリアフリー法を改正し、公共交通事業などに対するソフトウェア基準順守義務の創設や学校教育と連携した移動の円滑化に関わる「心のバリアフリー」の取り組みの推進などを盛り込んだ。
まちづくりや歩行空間整備に関しては、官民が連携して賑わい空間を創出する取り組みを市町村のまちづくり計画に位置付けることなどの措置を講ずる「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案」を2020年2月に国会に提出するとともに、「居心地が良く歩きたくなる」空間の整備に対する支援を行う「まちなかウォーカブル推進事業」や公共空間の拡大につながる民地の開放・施設の改修に対する税制特例措置などを2020年度に創設した。
日本では、世界のどの国も経験したことのない異次元の高齢化が進行しており、今後も継続することが予測されている。こうした中で、高齢者が外出をして、「働く」「学ぶ」「遊ぶ」ことの重要性が増している。高齢者の外出を促すためには、行きたい時に、行きたい場所に行けるような「足」としての交通の確保に努めるだけではなく、あらゆる政策・取り組みの過程で、外出促進の観点での検討を行う視点が重要となる。それにはMaaSなどの新しい技術を高齢者が使いやすいように改善したり、従来の制度や慣行を見直したりすることも必要である。
交通白書2020は、こうしたあらゆる取り組みの結果、日本において高齢者が使いやすい交通が維持され、生涯生きがいをもって生活するような社会が実現できれば、今後、超高齢社会に突入する世界の多くの国々にとってもよいロールモデルになるとしている。
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