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ヤマハ発動機の自動運転車は路面を見て走る、磐田市で2年間の実証実験開始自動運転技術(1/2 ページ)

ヤマハ発動機は2019年6月27日、静岡県磐田市の本社で会見を開き、低速自動運転車を使った2年間の公道実証実験を同市で開始すると発表した。

» 2019年06月28日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
写真右からヤマハ発動機の日高祥博氏、磐田市長の渡部修氏、磐田市ゆるキャラのしっぺい(クリックして拡大)

 ヤマハ発動機は2019年6月27日、静岡県磐田市の本社で会見を開き、低速自動運転車を使った2年間の公道実証実験を同市で開始すると発表した。

 低速自動運転車は、ゴルフカーに保安部品をつけて公道を走行できるようにした「ランドカー」をベースに、センサーなどを追加した車両だ。時速20km以下の速度で走らせる。一般市民は乗車しない。採用する自動運転システムは、アスファルトの路面のパターンを基に、事前に決めたルートを識別して走行するというもの。当初は信号がなく交通量が少ないエリアで実証実験を行うが、信号のある交差点や交通量の多い道路が含まれるルートにも段階的に取り組む。

 磐田市には2020年春に新駅が開業するが、地元のバス事業者はドライバー不足の影響で新路線を運営する余裕がない。磐田市長の渡部修氏は、駅から住宅街や商業施設のあるエリアへの“ラストワンマイル”の移動手段として、低速自動運転車の実用化に期待を寄せた。

舗装面を見て走る、「世界初」の自動運転車

 公道実証実験では、自動運転システムの機能評価と、低速自動運転車が交通の流れや車両、歩行者に与える影響を検証することが目的となる。自動運転システムの機能評価では、停止や発進、車速のコントロールが円滑かどうか、想定したルートを正確に走行できるかどうか、どのような場面で人間による操作が必要になるかを確かめる。

 今回の公道実証実験に用いる自動運転システムは、これまで国内各地で走行させた実績のある電磁誘導方式とは異なる「バーチャルガイドライン」で走行ルートを認識する。障害物は、車両の前方、左右の側方、左側のAピラーに装着したLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)で検出して自動で停止する。実証実験中は、停止後の再発進はドライバーの操作によって行う。

実証実験に使用する車両は合計4つのLiDARを搭載(左)。タブレット端末で専用アプリを操作すると自動運転車を呼び出すことができる(右)(クリックして拡大)

 電磁誘導方式は、1996年にゴルフカー向けに実用化して以来、国土交通省や経済産業省の実証事業でも使ってきた。地中に埋設された誘導線の磁力線を感知して走行するため、積雪時でも走行ルートを検出できる強みがあるが、誘導線の敷設工事が必要な点や、分岐や合流など複雑な経路設定が難しい点が課題となっていた。

 バーチャルガイドラインは、車体の下に設置したカメラで70〜80cm四方の路面を見ながら走行する。アスファルトは原材料のばらつきがあるため、舗装の表面は均一ではなく場所によって異なる。これを利用し、事前に撮影した走行ルートの路面の画像と、走行中にカメラが撮影した画像を照合しながら、自車位置を推定しながら走る。

 バーチャルガイドラインのメリットは、インフラ工事が不要で、経路設定の自由度も高い点だ。また、自車位置は数cm単位の誤差で検出できるという。この技術は米国の研究機関が発案したもので、ヤマハ発動機は3年前からその研究機関と協力して開発してきた。実用化すれば「世界初の自動運転システム」(ヤマハ発動機 代表取締役社長の日高祥博氏)となる。ただ、天候に対しては弱点があり、降水量が一定以上になると路面のパターンの検出が難しくなる。

 公道実証実験は当面、信号がないエリアで行う。信号のある場所を通過するルートに段階を進める際には、信号機と車両が通信して信号の情報を得られるようにする。車載カメラの画像認識による信号の識別と併用することで精度を高める。路車間通信(V2I)は開発中で、警察などとも連携しながら実証実験を進めていく。

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