ヤマハ発動機と磐田市が公道実証実験を行うのは、JR袋井駅と磐田駅の間に新設される御厨(みくりや)駅の周辺だ。新駅予定地近くは工場が多いが、北上すると住宅街や大型商業施設がある。制限速度が低い道路で、後続車両が追い越し可能な幅員がある場所で実証実験を始める。段階的に、信号のある場所、交通量の多い道路の横断、交通量の多い道路での走行も行う。「公道実証実験では、低速自動運転車がただ邪魔になって渋滞を起こすだけなのか、周囲のクルマの巡航速度が下がってより安全な交通環境になるのか、どのような影響を及ぼすかを確かめたい」(ヤマハ発動機の担当者)。
また、ヤマハ発動機の本社と地理的に近いこともメリットとなる。社長の日高氏は「他県でも自動運転車の実証実験を行ったことがあるが、現地に行くだけで一仕事になってしまう。磐田市であれば、エンジニアがすぐに対応したり、やりたいことを試したりできる。磐田市でできないか、という声は以前から社内にあったので、今回の実証実験が実現したことはうれしい」とコメントした。
磐田市長の渡部氏も、会見で「自動運転車の実証実験はありがたい」と語った。「磐田市は都会でも過疎地でもないが、市民の移動の足の確保は課題になっている。バス会社はドライバーの確保が難しく、廃止される路線もあるが、自治体としては無理に存続することを頼めない状況だ。また、高齢者の運転免許返納が話題に上るが、返納後の代替手段について答えは出ていない。その答えとなるモデルケースを発信できるのであれば、市として積極的にバックアップしていく」(渡部氏)。
日高氏は低速自動運転車が地域の足となることに手応えを感じている。「低速自動運転は、1996年のゴルフカーから作り込んできた信頼性がある。また、乗用車ベースの自動運転車と比べてはるかに低コストなので、移動手段として導入しやすいのではないか。ただ、時速20km以下という速度なので走る場所を選ぶ必要はある。東京や名古屋、大阪のような大都市では低速自動運転車を走らせるのは難しいだろう。しかし、低速自動運転車を走らせることができる環境は日本中にあると考えている」(日高氏)。
また、ヤマハ発動機の担当者も「A地点からB地点に移動するだけであれば速度を重視する方が効率的だが、低速ならではの魅力もあると考えている。景色を見たり、顔見知りに声をかけたり、高齢者が外出を楽しむきっかけになるのではないか。低速自動運転車がどのように受け止められるか検証していく」と語った。
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