電気自動車(EV)のパワートレインに注力するパナソニック。ティア1サプライヤーとして受注を狙うのは、短距離移動が前提の超小型EV。中国などで一定の台数の規模を見込むビジネスだ。
「電気自動車(EV)に貢献できることは多い。システムでの受注を目指す」(パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 副社長の上原宏敏氏)と、パナソニックはEV向けパワートレインの提案を強化している。
車載充電器やインバーター、DC-DCコンバーターを統合した電源システムと駆動用モーターを開発し、2018年1月に開催された「CES 2018」で披露した。駆動用モーターは、インバーター単体もしくは電源システムと一体化することができ、組み合わせ次第でさまざまなパワートレインを構成することが可能だ。自動車メーカーの開発期間短縮につながるという。
これらの電動パワートレインは2018年度に量産することも決まっている。狙うのは、高電圧で一定以上の出力が要求される乗用車タイプのEVではなく、低電圧で低速走行が中心の超小型EVや電動バイクだ。中国の新興自動車メーカー各社がこうした車両を投入する計画で「新車市場に占める比率は小さくても、一定の台数規模が見込める」(パナソニックの技術者)という。
上原氏は「EVの駆動系のビジネスは始まったばかりだ。事業の大きさを数字で言うことは難しいが、大きく変わるポテンシャルを秘めている」と期待を見せる。
パナソニックが手掛ける車載充電器やDC-DCコンバーター、モーター、インバーター、電池システムは、家電や民生品で培ったコア技術を活用している。CES 2018で披露した電源システム一体の駆動用モーター(インテグレーテッドパワーユニット)も同様だ。2018年3月28日に横浜市内で開催した説明会で詳細を紹介した。
インテグレーテッドパワーユニットは対応する電源電圧が48Vで、低電圧のため大電流を扱う。そのためノイズや熱の対策が特に必要となり、「簡単には他社にまねされない」(パナソニックの技術者)という。
各部品の小型軽量化や高周波化によって一体化を実現した。インバーターはデジタル制御によって効率を改善しており、電力消費(電費)のシミュレーションにはモデルベース開発を活用している。これにより、インテグレーテッドパワーユニットは電費14.9km/kWh、電力密度0.8kW/l(リットル)を達成したという。出力は最大で8kWだ。他社の同様の製品は、電費が13.2/kWh、電力密度は0.2kW/lで、パナソニックは電力密度の高さを特徴とする。
高速走行しない車両であることが前提となるものの、インテグレーテッドパワーユニットと、インバーター一体の駆動用モーター(モーターユニット)を組み合わせて使用することで、さまざまな仕様をカバーする。
例えば、二輪車はインテグレーテッドパワーユニットは1基で、四輪車の場合はインテグレーテッドパワーユニット1基にモーターユニットを1基もしくは3基とすることができる。「低速走行であれば、ある程度の大きさの車両までカバーできる」(パナソニックの説明員)という。また、インホイールモーターとして使うことも可能だとしている。電動パワートレインは、他社製の駆動用バッテリーと組み合わせることも可能だが、バッテリーも含めてシステム全体の提供にも対応する。
今後、中国を中心に、電源電圧が48Vの超小型EVが増えていくとパナソニックは見込む。
「低電圧の場合、安全性を確保しやすく高電圧なEVよりも開発コストがかからない。中国では規格や規制から外れた小さなクルマがいろいろと出てきている。リチウムイオン電池ではなく鉛蓄電池を使ったEVもある。近距離移動が前提でバッテリー容量や充電時間にとらわれない超小型EVは、導入が進みやすいだろう。乗用車タイプのEVには及ばなくても、新興国であれば十分な台数規模になる」(パナソニックの技術者)
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