NEDO、14件のセルロースナノファイバー関連技術の研究開発に着手材料技術

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、低炭素社会の実現に向けた「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー(CNF)関連技術開発」事業において、新たに14件の研究開発に着手することを発表した。

» 2020年08月19日 06時30分 公開
[八木沢篤MONOist]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2020年8月12日、低炭素社会の実現に向けた「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー(CNF)関連技術開発」事業において、新たに14件の研究開発に着手することを発表した。

エネルギー転換・脱炭素化社会の実現を目指して

 同事業の実施期間は2020〜2024年度を予定し、2020年度の事業予算は6.6億円。研究開発項目は「(1)革新的CNF製造プロセス技術の開発」と「(2)CNF利用技術の開発」があり、(2)については「(2-1)量産効果が期待されるCNF利用技術の開発」と「(2-2)多様な製品用途に対応した有害性評価手法の開発と安全性評価」に分類される。

「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」事業の概要 「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」事業の概要 ※出典:NEDO [クリックで拡大]

 (1)革新的CNF製造プロセス技術の開発では、CNF複合樹脂の製造コストを大幅に低減させるためには、「生産性の大幅な向上による労務費、原動費の削減」や「樹脂との相溶性を高めるための化学処理での薬品コストの低減」などを含む製造プロセスの見直しが必要だとし、従来技術の延長ではなく、抜本的な見直しを行った新しい製造プロセス技術の開発を目指す。

 (2-1)量産効果が期待されるCNF利用技術の開発では、広く普及する可能性のある自動車や建築/土木資材、家電分野などに適用させるため、これら用途に適したCNFの製造技術や成形、加工技術の開発などを行う。

 さらに、(2-2)多様な製品用途に対応した有害性評価手法の開発と安全性評価では、今後拡大が見込まれるあらゆる用途に対するCNF利用の安全性評価と、企業が製品化する際に簡易的に取り組める有害性評価手法の開発を行うことで、事業化支援につなげていくという。

 NEDOは、これら技術開発によりCNFを利用した製品の社会実装および市場拡大を早期に実現することで、CO2排出量の削減を図り、エネルギー転換・脱炭素化社会の実現を目指すとしている。

実用化イメージについて 実用化イメージについて ※出典:NEDO [クリックで拡大]

 今回、研究開発に着手する採択テーマおよび実施予定先は以下の通りだ(表1)。

研究開発項目 採択テーマ名 実施予定先
(1)「革新的CNF製造プロセス技術の開発」
(助成事業)
疎水化TOCN(TEMPO酸化セルロースナノファイバー)および樹脂複合化の製造プロセス技術の開発 花王
CNF/塩化ビニル系樹脂複合体の低コスト化技術の確立 大洋塩ビ
プラス・テク
CNF強化樹脂(PA6、PP)の低コスト製造プロセス技術の開発 日本製紙
宇部興産
伝動ベルトをターゲットとしたCNF複合化クロロプレンゴムの低コスト製造技術開発 東ソー
バンドー化学
革新的CNF複合樹脂ペレットの製造プロセスの開発 大王製紙
芝浦機械
高性能、高生産性セルロースナノファイバー複合材料の革新的製造プロセスの開発 星光PMC
ウォータージェット技術を用いた革新的CNF製造プロセス技術の開発および乾燥技術の開発 スギノマシン
(2)「CNF利用技術の開発」
(2-1)「量産効果が期待されるCNF利用技術の開発」
(助成事業)
CNF技術を利用した住宅・非住宅用内装建材の開発 大建工業
利昌工業
自動車部品実装に向けたCNF複合材料開発、成形・加工技術開発 ダイキョーニシカワ
革新的ガス吸着再生CNF複合フィルタを用いた多機能型デシカントフィルタシステムの開発 進和テック
炭素循環社会に貢献するセルロースエコマテリアル開発および商品適用検証 パナソニック
CNF配合エラストマーの製造プロセス低コスト化による製品実装技術開発 住友ゴム工業
日本製紙
(2)「CNF利用技術の開発」
(2-2)「多様な製品用途に対応した有害性評価手法の開発と安全性評価」
(委託事業)
多様な製品用途に対応した有害性評価手法の開発と安全性評価 産業技術総合研究所
福井大学
表1 研究開発テーマ名および実施予定先一覧

⇒ その他の「材料技術」関連ニュースはこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.