環境省は「第46回東京モーターショー2019」に出展し、植物由来の次世代素材「CNF(Cellulose Nano Fiber)」を用いて製作されたスポーツタイプのコンセプトカー「NCV(Nano Cellulose Vehicle)」を初出品した。
環境省 地球環境局 地球温暖化対策課は「第46回東京モーターショー2019」(会期:2019年10月24日〜11月4日、東京ビッグサイト他)に出展し、植物由来の次世代素材「CNF(Cellulose Nano Fiber:セルロースナノファイバー)」を用いて製作されたスポーツタイプのコンセプトカー「NCV(Nano Cellulose Vehicle:ナノセルロースビークル)」を初出品した。
CNFとは、間伐材など伐採した木材から取り出した木材繊維(パルプ)に対して、化学的、機械的処理を施し、繊維をナノレベルまで細かくほぐすことで得られるバイオマス素材である。植物由来であることから、生産や廃棄における環境負荷が非常に小さく、軽量。「鋼鉄の5分の1の軽さで、5倍以上の強度を誇る」(説明員)とし、耐膨張性などにも優れた次世代素材として今後の普及が見込まれている。
近年、自動車分野においては、CO2排出量の低減が求められており、電動化とともに、車両重量の軽量化の実現が不可欠とされている。その実現を支える材料として、環境省はCNFの可能性に着目し、2016年度からCNFの自動車への実装を目指した評価事業として「NCVプロジェクト」をスタート。京都大学を代表機関に据えて同プロジェクトを推進し、現在22の企業や教育・研究機関などが参画している。
「今回のコンセプトカー(NCV)はこれまでの活動の集大成。自動車を構成する部材にCNFをできる限り使用し、実現にはCNFのポテンシャルを最大限に生かすさまざまな工夫が施されている」と説明員は述べる。
NCVの実現には、これら参画機関が有する基盤技術、具体的には「材料技術」「成形加工技術」「部材設計技術」が生かされ、量産化を視野に入れたCNF活用部品が随所に用いられている。
材料については、自動車部品に多用されるポリプロピレン(PP)、ナイロン6(PA6)、ポリカーボネート(PC)などの樹脂材料とCNFをナノレベルで複合化させた材料(CNF複合材)を開発。さらにボンネット(CNF100%材)、ドアアウター、ドアトリム(PP-CNF材)、バックガラス(PC-CNF材)、スポイラー(PP-CNF材)、ホイールフィン(PA6-CNF材)などの部材ごとに、CNF材料の特性を生かした設計を施すことで、それぞれ10%以上の軽量化を実現したという。
また、CNF複合材を用いた部材の成形加工については、射出成形、発泡成形、ブロー成形、プレス成形など、それぞれ適した成形加工法を選択し、自動車の量産に適用可能な形状を作り上げている。
展示会場では、NCVの実車とともに解説用のパネルや部材も展示。解説用のパネルには、13ものパーツがCNF材を用いて製造されたことが示されており、それぞれの主要樹脂、CNFの複合比率、成形加工法、担当事業者も確認できた。例えば、トヨタ車体が担当したバッテリーキャリアは、従来の金属部品からPP-CNF材に置き換えることで30%の軽量化を実現。また、トヨタ紡織が担当したドアトリムはPP-CNF材を用い、同等性能および同等生産性を実現しつつ15%以上の軽量化を達成したとする。
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